藤田嗣治挿画本『ポーゾル王の冒険』のご紹介
こんにちは。
ブログをお読みいただきありがとうございます。
昨年は藤田嗣治没後50年を記念し、日仏両国で大回顧展が行われましたね。
当ブログでも
目黒区美術館「没後50年 藤田嗣治 本のしごと」
東京都美術館「没後50年 藤田嗣治展」
をご紹介いたしました。
このうち「本のしごと」展は巡回し、ただいま八王子の東京富士美術館にて開催中。
3月24日(日)までですので、見逃した方や、もう一度ゆっくりとご覧になりたい方におすすめいたします。
弊社でも3月いっぱいは、ギャルリー・アルマナック吉祥寺にて「藤田嗣治 美しき挿画本の世界展」を行っています。
挿絵の額装品や限定稀少本をご覧いただけるこの機会をお見逃しなく。
展覧会ページはこちら
藤田が最初にパリに渡ったのが1913年。
1910年代末頃より木版画に取り組むようになります。
最初の木版挿絵は『レ・レトル・パリジェンヌ』(1919年)という文芸誌でした。
この頃のフランスでは木版画の素朴な表現が好まれていました。
ラウル・デュフィも『動物詩集、あるいはオルフェウスの行列』(1911年)や『骨董 古きもの』(1923年)などの挿絵を手掛けています。
エピナール版画(19世紀初めに制作が始まった大衆向けの版画)を想起させるようなあたたかな味わい。
どこか懐かしく、同時に新鮮な魅力も感じられますね。
さらに藤田は『アマルと王の手紙』(1922年)、『東方所観』(1925年)と自ら彫った木版画を挿絵として提供。
『ポーゾル王の冒険』(1925年)では、藤田の原画を職人が木口木版に起こしています。
作者はベルギー生まれの詩人、小説家のピエール・ルイス(1870-1925)。
文学界ではアンドレ・ジッド、ポール・ヴァレリー、ステファヌ・マラルメ、オスカー・ワイルド、また作曲家クロード・ドビュッシーら錚々たる面々と交友がありました。
古代ギリシャ文化に非常に造詣の深かったルイスの作品は、性愛を正面から取り上げながらも、鋭い叡智が見え隠れすると評されます。
物語は空想の国トリフェームが舞台。
快楽主義者の国王ポーゾルは366人(!)の后を後宮に住まわせ、毎晩ひとりずつと寝室で過ごしていました。
17歳の愛娘、アリーヌ姫がこっそり王宮を抜け出し、旅回りの一座のダンサーと恋に落ちてしまいます。
娘を捜しに出発するポーゾル。
王が不在のこのとき、後宮の后たちは自由を求めて反乱を起こします。
奇想天外な出来事を経て、アリーヌ姫を無事見つけ戻ったポーゾルは娘や后たちを解放することを宣言します。
吉祥寺店では原本のほか、小さな挿絵の額装もご用意しました。
ちょっとしたスペースに飾れると、大変ご好評をいただいております。
『ポーゾル王の冒険』の詳細ページはこちらよりどうぞ
(HPからのご購入も可能です)
この小説を元にオペレッタ(1930年/アルチュール・オネゲル作曲)や映画(1933年/アレクシス・グラノフスキー監督)も作られています。
映画「おしゃれな王様」(日本公開時の邦題)は残念ながら現在鑑賞する手段がないようです…。
代わりに、メキシコの鬼才ルイス・ブニュエルの遺作「欲望のあいまいな対象」(1977年)をご紹介。
ピエール・ルイスの『女と人形』(1898年)が原作です。(映画化は何と6度目!)
ご覧になった方は、あの不可思議な世界観を覚えていらっしゃることでしょう。
映画は無論ブニュエルの演出が際立っていますが、ストーリーの奇抜さはやはりピエール・ルイスならでは。
これからご覧になる方には、その昔、私がリバイバル上映に駆け付けたパリの小さな映画館でチケット売りの女性にかけられた一言を贈ります。
「とても良い映画だから楽しんで!」
(K・T)