東京都美術館「没後50年 藤田嗣治展」

藤田嗣治展

こんにちは。
ブログをお読みいただきありがとうございます。

藤田嗣治が永眠したのは1968年1月29日。
今年は没後50年を記念して、フランスと日本で複数の展覧会が企画されました。

Le Parisien より画像引用

パリ、マイヨール美術館での『FOUJITA Peindre dans les années folles(フジタ 狂乱の時代に描く)』は大盛況のうちに幕を閉じました。
以前のブログでご紹介した「没後50年 藤田嗣治 本のしごと」は現在、静岡のベルナール・ビュフェ美術館を巡回中です。

東京都美術館にて開催中の大回顧展は10月8日まで。
先日、金曜夜間開館を利用して行ってまいりました。
昼間の強い日差しを避けられるこの季節のナイトミュージアムはとてもおすすめですよ。
8月中は21:00まで、9月以降は20:00までゆっくり鑑賞できます。
(金曜日のみですのでお間違えなく!)

展示は藤田の生涯をなぞらえていくように地階、1階、2階と上がっていく構成。
なかでも、1階すぐの“ 乳白色の裸婦 ”の時代の作品群にやはり圧倒されます。
“le grand fond blanc(すぐれた白の下地)”が1920年代のパリを熱狂させたのを肌で感じずにはいられません。

RMN より画像引用(本展覧会には未出品)

初めてパリを訪れ、16区のパリ市立近代美術館で<寝室の裸婦キキ>(1922)を目の前にした時の衝撃が蘇ってきました。
ベッドに横たわるキキのなめらかな肌。真っすぐな視線。トワル・ド・ジュイの溜息の出るような美しさ。

メゾン・アトリエ・フジタの主任学芸員、ル・ディベルデール氏は
「フジタは人の肌の乳白色を(キャンバス上に)取り戻したいと思っていました。
そして、白を震えさせることに成功したのです。」と語っています。(Le Point  2018年3月6日の記事より)

“ 震えさせる ”という単語にとても共感します。
藤田の乳白色が観る者を惹きつけるのは、この色には独特の深みと広がり、そして揺らぎがあるからこそ。
色に魂を宿らせるために研究に研究を重ねた藤田にあらためて感服しました。

 

途中、藤田がメガホンをとった映画「現代日本 子供篇」の上映がありました。
1937年に公開されたという「現代日本」は全10篇の内、5篇を鈴木重吉、5篇を藤田が監督。
現在4篇は所在が不明で、この「子供篇」のみ国立映画アーカイブが所蔵しているそうです。

余談ですが、国立映画アーカイブは今年4月に東京国立近代美術館フィルムセンターを引き継いだ日本唯一の映画専門機関です。
当日券一般520円という嬉しい価格で、古今東西の大変稀少な作品を日替わりで上映しています。

藤田嗣治 海龍
『海龍』1955年刊行

見ていて感じたのは挿画本『海龍』『朝日の中の黒い鳥』『八景』などの挿絵とも共通する日本文化への深い愛情。
『海龍』は以前のブログで詳しくご紹介したジャン・コクトーによる日本旅行記です。

チャンバラ遊びに夢中になり、紙芝居を真剣に見つめる子供たちの屈託のない笑顔のひとつひとつを見つめる藤田のカメラ。
後年、子供をテーマとした作品を多数描くようになったきっかけになったのかも知れませんね。

日本への熱き想い。
それが戦争記録絵画を制作することにもつながるのですが、戦後に軍国主義者として糾弾された藤田はフランスへ戻ることを決意します。
パリに帰った1950年に古巣モンパルナスの街角を描いた油彩が2点展示されていました。

画像クリックで詳細ページへ

そのうちの1点<ホテル・エドガー・キネ>(カルナヴァレ美術館所蔵)のためのデッサンがこちら。
この素描作品、ただいま弊社軽井沢店でご覧いただくことが出来ます!
画面中央には犬に挨拶をする女の子。
素描と見比べると、油彩では少し離れたところにもう一匹の犬、画面左にコートを着た婦人が加えられたことがわかります。

1913年、最初の渡仏の際、藤田はモンパルナスに居を構え、隣人にはスーティンやモディリアーニがいました。
3人とも外国人ということで意気投合したようです。
>フジタ,モディリアーニ,スーティンの友情

1950年に同地区に帰ってきたとき、既に盟友2人はこの世から去っていました。
帰ってこない日々への郷愁と新たな生活への期待。
藤田のそんな胸中が表現されているように感じます。
詳細ページはこちら

 

126点を一堂に集めた本展覧会は10月19日より京都国立近代美術館に移動。
さらに一部の作品は来年1月~3月、パリ日本文化会館で展示予定だそう。
二つの母国を持つフジタの画業はこれからますます世界中で注目されていくでしょう。
 


藤田嗣治展チラシ現在、弊社軽井沢店および吉祥寺店では「藤田嗣治 子どもと猫の絵画展」を開催しています。
(※吉祥寺店では8/31まで「星の王子さまと世界の絵本・挿絵展」と併催)

藤田のアトリエに遺された<君代夫人コレクション>を中心とした、油彩、水彩、素描、版画、挿画本などの秀作の数々を取り揃え、皆様のお越しをお待ちしております。

店舗詳細はこちら(軽井沢店 / 吉祥寺店
弊社取扱い藤田嗣治作品はこちら

(K・T)