ラウル・デュフィ「電気の精」のご紹介

こんにちは。
ブログをお読みいただきありがとうございます。

3連休は行楽日和でしたね!
吉祥寺も、秋祭りが開催されるなど賑やかな連休でした。

さて本日は、当店でも数多く所蔵しておりますラウル・デュフィ作品の中から、夢幻的な色彩で観る者を魅了する圧巻の装飾画「電気の精」をご紹介します。

作品名:「電気の精(10枚セット)」
制作年:1953年 制作技法:リトグラフ 制作部数:350部 制作工房:ムルロ工房
1枚のシートサイズ:100×63cm

1937年のパリ万国博覧会。
その博覧会では、電気やエネルギーなど近代文明の進化を讃えるための会場「電気館」が設けられ、大盛況を博しました。

その開催の1年前、電気館の顔ともなる大壁画の注文を請け負った人物。
それこそがラウル・デュフィだったのです。
1851年に始まった万博は、元々産業革命により飛躍的に発展した科学技術などの成果を大々的に披露するための催し物。
特に開催国は高い産業力を他国に誇示すために趣向を凝らし、機械類のような産業分野に属するものの他、工芸品や絵画、彫刻に至るまで多くの産物が出品されたのです。

しかし、デュフィが一人で請け負うことになった壁画の大きさは、何と横60m、縦10m。
とてつもなく巨大なスケールに、何をどう表現するかデュフィは悩みます。
思案の末主題に選んだのは、電気にまつわる科学者や哲学者を讃える壮大な物語。
約110人の英雄たちを登場させるそのデッサンに1年を費やしました。

画面の右から左へと繰り広げられる舞台の始まりは古代ギリシャ。(トップ画像では右下からスタート)
アルキメデス、タレス、アリストテレスのいる牧歌的風景から物語が始まります。

次第に古代ローマのコロッセオや橋、工場などが現れ、都市の発達にみる文明の進化が描かれていきます。
電気の発達が全体的テーマのため、蒸気機関や煙突のついた工場群、機械などあまり絵画では見られないモティーフの数々が印象的ですね。

さらに画面左へと時は流れ、最後に人間の叡智の進化や近代文明をオリンポスの神々が祝福。
最後に、地上からの光を浴びて電気の精が飛翔する場面で締めくくられています。
デュフィは制作にあたり、水彩のような淡い色遣いを表現するため、化学者のジャック・マロジェとともに顔料の研究に腐心。
顔料の不透明性を取り除く溶剤(メディウム)を開発し、以降も自身の作品に積極的に採用しました。

パリの市立近代美術館での展示の様子

 

さて、この巨大壁画。
万博終了後は、どこに行ってしまったのでしょうか。
その壁画は現在、パリの市立近代美術館に常設展示されており、今でも見ることができます。


ピカソ「ゲルニカ」

ちなみに、ピカソの有名な「ゲルニカ」は、実はデュフィの壁画と全く同じ1937年の万博で発表された作品。
「ゲルニカ」は電気館ではなく、スペイン館に出品されたそうですが、当時訪れた人の多くが戦争の悲劇を描いた「ゲルニカ」に背を向け、デュフィの「電気の精」を目にするために行列を作ったとか。


当店では、1953年にパリの有名版画工房ムルロ工房の設立40周年を記念して制作された、「電気の精」のリトグラフをお取り扱い中。
壁画を細部まで忠実に表現し1/10縮小サイズの10枚パネルセットで、当時350部限定で制作されました。
デュフィらしい華やかで軽やかなタッチと色彩で現物と引けを取らない非常に見応えのある作品です。

ご興味ございましたら是非お気軽にお問い合わせくださいませ。
また、弊社が所蔵する他のデュフィ作品は、こちらでもご紹介しております。

(R・K)