【3月企画展】ギャルリー・アルマナック吉祥寺「ミュシャ小品版画展」開催中!


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ブログをお読みいただきありがとうございます。

明日から国立新美術館で始まる大規模な「ミュシャ展」に向けて、駅構内や書店など街角でも「ミュシャ」の文字をちらほらと見かけるようになりましたね。

先月末発売された最新号の『芸術新潮』も、今回のテーマはミュシャ一色。
詳細な作品解説からミュシャの出身地であるチェコのことまで、盛りだくさんの充実した構成になっています。

『トリポリの姫君イルゼ』『主の祈り』など、ミュシャが手がけた挿絵を紹介する誌面では、写真提供という形で弊社も携わらせていただきました。

その展覧会の開催を記念し今月、ギャルリー・アルマナック吉祥寺でもミュシャを大特集。
今月は、スラヴ叙事詩やサラ・ベルナール主演の舞台ポスターなど多くの目に触れる大作と同様に、ミュシャが大切にし、力を入れて制作した挿画本やメニュー、ポストカードなど、愛らしいサイズの作品にスポットを当てた約70点を展示・販売いたします。
出品作品の一部をご紹介いたします。


「L.U.ビスケット:ナポリ」(リトグラフ 1900年) 「L.U.ビスケット:ローマ」(リトグラフ 1900年)

「L.U.ビスケット:ヴェニス」(リトグラフ 1900年)

「L.U.ビスケット:マデラ酒」(リトグラフ 1901年)
「L.U.ゴーフル:プラリネ」(リトグラフ 1901年)
(参考)「L.U.ビスケット:マデラ酒」菓子缶

19世紀末。
機械化が進み、大消費時代を迎えたヨーロッパではありとあらゆる日用品が巷に溢れていました。
商品を効果的にアピールするためには消費者の心を捉える広告やパッケージが何よりも重要となった時代。

菓子会社ルフェーブル・ユティル社(=L.U.)がミュシャに依頼した菓子缶の包み紙のデザインは、商品に優雅さと気品を与える大ヒットアイテムとなりました。


「12ヶ月のポストカード」(リトグラフ 1900年頃)
ル・モア11月号

ミュシャが手がけた広告や挿絵、装飾パネルのモチーフは当時、アート・ポストカードとしても発行され、庶民や子どもも楽しめる美術品となりました。
本展では12枚のポストカードをセットにした額装品を出品。
だれかが大事にコレクションし保管していたのでしょうか。
大変コンディションが良く未使用のまま残された逸品(上)です。 

1月から12月をテーマにしたこのポストカードシリーズは、もともと美術文芸雑誌『ル・モア』から着想を得たもの。
ミュシャが年間の表紙デザインを担当したこの雑誌では、彼が得意とした「擬人化」の方法を用いて、12ヶ月が優美で個性的な女性像として表現されました。


「カレンダー・プロジェクト」(リトグラフ 1897年)

“販促品”とは、商品の販売促進(セールスポロモーション)のため、企業が新規顧客及び既存顧客に向けて配布されるグッズのようなもの。
現在でも、ティッシュからボールペンから団扇から多種多様な販促品が溢れていますね。
ミュシャが活躍した19世紀末当時のパリで代表的だった販促品が「カレンダー」。
ミュシャが出版社やチョコレート会社とコラボした数多くのカレンダーがよく知られていますが、本作はどうしたわけかカレンダーとしては実際に採用されなかったデザイン。
殺到するデザインの依頼にミュシャが書き溜めておいた一枚だったかもしれませんね。
何とも贅沢な販促品に思わずほれぼれとしてしまう作品です。


 

「主の祈り・祈祷文・Ⅴ」(1899年 リトグラフ)
「主の祈り・本文・Ⅴ」(1899年 リトグラフ)

ミュシャといえばやはり有名なのは「優美で華麗な夢見るような女性像」ですが、世紀末という不穏な時代を存分に反映した妖しく霊的な雰囲気の作品が挿画本『主の祈り』
この本が出版された1899年前後のミュシャは、不動のものとなっていた装飾家・図案家としての名声を必死に振り払おうとし、芸術家として、スラヴ人として、人間としての自らの行く末を模索していた時期でした。
神へ捧げる祈りを主題にした本作からは、使命感と葛藤に揺れるミュシャの姿が浮かぶようです。
晩年の傑作「スラヴ叙事詩」の精神を直接継承する前触れとも言える記念碑的な作品。

会期は3/30(木)までです。
多くの皆様のお越しをお待ちしております。

(R・K)