【吉祥寺店】2月「海を渡った画家三人展 - 藤田嗣治、長谷川潔、浜口陽三 - 」開催中!

ギャルリー・アルマナック吉祥寺 展示一層寒さが身に染みる季節となりましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
都内でも2度目の積雪で、雪が降り始めるとまず考えるのが、交通機関の心配です。
子供のころのように、雪の美しさを楽しめる心のゆとりが欲しいものですね。

さて、毎月開催しております当店の企画展ですが、今月は「海を渡った画家三人展 - 藤田嗣治、長谷川潔、浜口陽三 - 」展を開催中です。
渡仏、版画、線描美・・・と共通点のある三人の作家たちですが、いずれも独自の技術を開拓した革新的な作家だということが一番の共通点かもしれません。

当時衰退していたマニエール・ノワール(*メゾチント(英)の仏語)を蘇らせ、新たに東洋の水墨画にも通じる「静の美」を追求した長谷川潔、
本来モノクロの技術とされていたメゾチントに色彩を用い「カラーメゾチント」を作り上げた浜口陽三、
そして油彩画の作品に日本画で用いられる墨の輪郭線の美しさを追求し、独自のスタイルを突き詰めた藤田嗣治。
*メゾチントについてはこちら

版画家では非常に有名な長谷川潔と浜口陽三ですが、洋画家である藤田嗣治も繊細な線描が表現できる銅版画や木版画の世界に魅せられた作家の一人です。
どんなことにも好奇心旺盛な藤田の自宅には、銅版画を刷る時に使用するプレス機があり、日々研究していたのだとか。
「画家にして版画家」(パントル・グラヴュール)ではピカソやシャガールが有名ですが、藤田もその一人と言ってもよいかもしれません。

西洋に憧れを持ちつつ、日本人としての誇りを持ち続け、パリ画壇への挑戦を試みた作家たちの珠玉の作品をご堪能いただければと存じます。

今回の出品作品でお勧めの作品をいくつかご紹介いたします。

浜口陽三「緑のさくらんぼ」
(1981‐89年11/145 メゾチント
直筆サイン入り)

藤田嗣治「オペラ座の夢」
挿画本「魅せられし河」より(1951年
315部 エッチング)

(左)浜口陽三「緑のさくらんぼ」
暗黒の中に浮かび上がる一粒のさくらんぼ。
静けさのなかに存在する対象物が凛とした存在感を放つ、浜口陽三の代表作です。
色彩の重なり合いが生み出す重厚感とそっと触れたくなるような温かさが感じられる小作品です。
浜口陽三の他の作品は→こちら

(右) 藤田嗣治「オペラ座の夢」
この挿画本の著者ルネ・エロン・ド・ヴィルフォスが語った"パリの美しい古き良き街並みが、まるで人々が魅せられるセーヌの川のようだ"の言葉にふさわしい藤田の繊細な線描美とパリへの憧れの思いを描いたなんとも美しい版画作品です。
藤田嗣治の他の作品は→こちら

長谷川潔「花瓶に挿したコクリコと種草」(1937年 E.A. ビュラン 直筆サイン入り)

つまやかな花瓶に何気なく活けられたコクリコや種草、そしていくつもの綿毛が詰まったジャイアントタンポポ。
どれも天才銅版画家・長谷川潔が愛した草花たちです。
手毬のようなタンポポのまあるい綿毛と、花瓶の丸みのあるフォルムが作品全体に優しい印象を与えています。
植物の生命力と神秘性を見事に捉えた長谷川らしい一点。

日本では雛罌粟(ひなげし)として親しまれるコクリコは、女流作家の与謝野晶子もこんなふうに歌っています。
「ああ皐月 仏蘭西の野は 火の色す 君も雛罌粟 われも雛罌粟」
夫を追ってようやくパリへたどり着いた五月に見たコクリコの赤い花を自らの燃える心になぞらえて謳いました。
長谷川潔の他の作品は→こちら

会期中の皆様のお越しをお待ちしております。

(M・M)