エルテ「Duette」のご紹介

ブロンズ
制作年:1989年
制作国:フランス
制作数:500体(台座部分に陰刻サイン)
サイズ:H46.9×W47.8×D17.6cm

東京都庭園美術館外観

こんにちは。
ブログをお読みいただきありがとうございます。

以前こちらのブログでご紹介した、東京都庭園美術館。(詳しくはこちら
1920年から40年にかけて世界中で一世を風靡した美術様式「アール・デコ」を取り入れた当時最先端の建築物です。
その家主は皇族一家の朝香宮家でしたが、当時一般富裕層の邸宅にもこの流行建築は徐々に浸透していました。


その一つが、渋谷区の瀟洒な住宅街の一角に佇む「旧千葉常五郎邸」。
注文主の千葉直五郎は煙草の専売権を国に譲渡し、その利権を得たことで莫大な資産を手にした実業家。
彼は、息子・常五郎とその妻・京子の新婚祝いにと、アール・デコの装飾で彩られたこの美しいお邸を贈りました。

旧千葉常五郎邸

 

華やかな社交場でもあった邸宅内部には、住居スペースの他にダンスホールやビリヤード場、バーカウンターや地下には温水プールも備えられていたとか。
何だか「グレート・ギャツビー」の世界を彷彿とさせますね。
さらに、その空間を華やかに演出したのがデザイン性の高い豪華な調度品。
アール・デコの父と称された「エルテ」のブロンズ像や絵画作品が見事に調和した空間で独特の世界観を解き放っています。

「ハーパーズ・バザー」1923年1月号

 

この「エルテ」とは何者でしょう。
彼は本名をロマン・ド・ティルトフ(1892-1990)というロシア生まれの芸術家で「エルテ」の呼び名はイニシャルのR・Tをフランス語読みしたもの。
デザイナーとしてファッションやジュエリー、さらには舞台衣装や舞台装置のデザインなど多岐にわたり活躍した20世紀の万能人で、ポール・ポワレに才能を見込まれファッション雑誌「ガゼット・デュ・ボン・トン」に挿絵を描き、さらに1915年から37年にかけては、現在も続くモード雑誌「ハーパース・バザー」の表紙を200枚以上も手がけたまさにアール・デコの寵児でした。

 

今回ご紹介するブロンズ像「Duette」は、エルテがデザインし1989年に500体限定で制作。
ファッションモデルを思い起こさせる手足の細長い完璧なプロポーションに蠱惑的な姿態。
東洋的なエキゾティシズムが漂うクールエレガンスが特徴のエルテらしい女性像に、ドレープの流れる曲線美と安定感のあるシンメトリーな造形美が麗しい秀作です。
生涯にわたり旺盛な創作意欲を持ち続けたエルテ晩年の力作は、今なお観る者を虜にする妖しい輝きをまとっています。
ちなみに、「エルテ」作品を多数収蔵する旧千葉常五郎邸は現在レストラン「ロアラブッシュ」として運営。
往時の面影とアール・デコの世界に浸りながら優雅な時間を過ごせるそうです。


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(R・K)