リニューアルオープン!東京都庭園美術館


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1933年。港区白金の地に日本有数のアール・デコ建築が誕生しました。
それが、明治後期の宮家・朝香宮初代鳩彦王のご私邸として建てられた「朝香宮邸」。
現在「東京都庭園美術館」になっているこの旧朝香宮邸には、設立当時、世界中で流行していた直線的・幾何学的なデザインでシンプルな機能美を追求するアール・デコ様式の意匠が随所に散りばめられています。

近頃、約3年に及ぶ休館期間中の調査・修復活動を経て、美術館がリニューアルオープン。
時を越えてよみがえった、熟練したアーキテクツ達の思いと匠の技。
その開館記念展に行ってまいりました。

当時建設に関わったのは日本人の技術者だけではありません。
アール・デコ時代を代表する名だたる芸術家達が内装を豪華に演出しました。
まず、正面玄関を入ると出迎えてくれるのは美しいガラスレリーフの扉。
まるで来客を邸宅の中へと誘う女神のような本作は、あのガラス工芸家巨匠、ルネ・ラリックが手がけました。

他にも、大広間のシャンデリアや大食堂の燭台をラリックがこの邸宅のために手がけています。
ところで、アール・デコ様式といえば、線や円の繰り返しでリズミカルなパターンを作るのが特徴。
例えば、シャンデリアの吊るされた天井脇のジグザグ模様は、当時登場したばかりのラジオ電波をイメージしたんだとか。

この邸宅の主でいらっしゃった朝香宮鳩彦王とご結婚された允子妃はフランスの芸術・文化への造詣が大変深い方でした。
鳩彦王とともにパリで1925年に見学された「現代産業装飾芸術国際博覧会(通称:アール・デコ博)」で、その斬新な様式に魅了された允子妃。
帰国後、関東大震災により被災した高輪の旧邸宅に変わる新しい住居の設計の際に、アール・デコ芸術を愛する彼女の意向が多く反映したのです。
「住む」という機能性を重視したアール・デコスタイルを貫きつつも、各部屋の内装はそれぞれ個性を持っていたのが印象的でした。

湾曲した窓から望む庭園 二階へと続く階段 落ち着いた雰囲気の殿下居間 ラリック代表作の一つ「ヴィクトワール」

アンリ・ラパンやルネ・ラリックなど流行の第一線で活躍していた西洋の芸術家と、皇室建築のエキスパート集団「宮内省内匠寮」の技術が見事に融合した、世界に類を見ない意匠空間です。
庭園美術館のこれからの企画展も楽しみですね!

(R・K)