アイリッシュドレスデン「ピンクのドレスのリュシール」のご紹介

こんにちは。
ブログをお読みいただきありがとうございます。

さて、梅雨の真っただ中。ここ数日はじとじととした天候が続きますね。
気温が低いので蒸し暑さはないですが、体調を崩されている方も多いようです。皆様も十分にお気を付けください。

さて今回は息をのむほどに美しい、可憐で繊細な装飾が施されたアイリッシュドレスデンのレースドールをご紹介いたします。

レースドールの名窯「アイリッシュドレスデン」。
アイリッシュという地名が冠されていますが、誕生はドイツのドレスデン。

以前、ブログでマイセンの作品をご紹介したように(詳しくはこちら)ヨーロッパ陶磁器の始まりは遡ること今から約300年前。
ヨーロッパで最初に硬質(白色鉱物カオリンを70%以上含む)の白磁生産に成功したドイツ・マイセン地方のマイセン窯でした。

その後、他の国々もそれぞれ開発に腐心しヨーロッパの窯業は次々と花開きます。
マイセンから西に約160km離れたチューリンゲン地方ドレスデンの工房も窯業が盛んだった地方の一つ。

アントン・ミュラー

1895年。
陶工のアントン・ミュラーは、ロココ調の装飾的で美しい磁器人形を専門にした工房をフォルクシュタットに設立します。
優美で洗練されたデザインと並外れた技巧で地元の伯爵の厚い庇護をうけるなどたちまち評判になりました。

 

バックスタンプ

陶磁器の裏には、ミュラー(M)とフォルクシュタット(V)のイニシャルと共に誇り高き王冠のマークが用いられていますね。
バカラがクリスタルの王者なら、ミュラーはレースドールの王者になる。
そんな強い自負の表れだったのかもしれません。


しかし、第二次世界大戦下の1945年3月。
爆撃の焼夷弾によりフォクシュタット一帯が焦土と化す悲劇が襲います。
幸い、創業者アントン・ミュラーの親族であったジョアンナ・サァと夫のオスカーが、ミュラー社の地下室に残っていたレースドールの命とも言えるモールド(型)を発見。
貴重な原型を携えて、決死の思いで国を脱出しました。
その後二人はアイルランド南西部で工場を再建。
この時に社名をアイリッシュドレスデンへと変更したのです。

ところでこのレースドール、一体どのように制作されるのでしょう。
実は、制作工程には本物のレースを使っています。
特殊な磁器粘土の溶液に浸した純綿のレースを素焼きのビスクドールに一枚一枚細かなひだを作りながら丁寧に配し、1300℃前後の高温で焼成すると窯の中でレースの布地自体が消失し、網目のみが残るのです。

この技術により可能となったのが、レースがふんだんにあしらわれたふわりとしたクリノリンスカートや花嫁のヴェール、リボンなどの柔らかな表現。
一つ一つ手作業で施される精緻な絵付けも見事で、ほのかに赤みを帯びたロマンティックな表情など細部まで見飽きることがありません。


当店では、この名窯アイリッシュドレスデンの他、ドイツのウンテルヴァイスバッハやイタリアのルイジ・ファブリスなど数多くのレースドールをお取り扱いしております。
繊細なレース細工や絵付けの高度な技術はもちろん、人形たちの醸し出す雰囲気が今にも動き出しそうなほどリアルで見応え十分。
職人たちが命を吹き込んだ華やかで優雅なレースドールをご覧に、是非当店までお越しくださいませ。
また、他陶磁器作品はこちらでご覧いただけます。


(R・K)