国立新美術館「ピエール・ボナール展」

ピエール・ボナール <ル・カネの食堂> 1932年 油彩 オルセー美術館所蔵

こんにちは。
ブログをお読みいただきありがとうございます。

ナビ派の代表格、ピエール・ボナールの大回顧展に行ってまいりました。
2015年にオルセー美術館で開催された「ボナール展」には51万人が入場し、同館歴代入場者数第2位を記録するほどの人気を集めた画家。
日本での知名度はそこまでではないかもしれませんが、本展によりファンが急増することと思います。

昨年の「オルセーのナビ派展」(三菱一号館)で観たものもありましたが、初来日作品も多数。
油彩のみならず、デッサン、リトグラフ、挿画本、写真などの多様な制作物から、画家の全貌に迫った素晴らしい内容です。

やはりボナールの魅力は、アンティミスト(=親密派)と呼ばれる所以となった “くつろいだ雰囲気” 。
なんでもない日常が切り取られた作品群はとても身近に感じられます。
こうした主題の選択も、構図や平面性と同様に浮世絵からの影響だとか。
私たちがボナール芸術に共感を覚えるのも当然なのかもしれません。

 

まず心を奪われたのは小さな本、ジュール・ルナール著の『博物誌』でした。
表紙絵や挿絵がとてもチャーミングで、本展のショップで販売されている様々なグッズにも転用されています。
動物愛好家ボナールの軽やかな筆とルナールのユーモラスな散文のマッチングは絶妙!
全文(岸田国士訳)を青空文庫で読むことができますよ。

(ちなみにルナールの自伝的小説『にんじん』の1902年版はフェリックス・ヴァロットンが挿絵を担当しています。こちらも青空文庫あり。)

 

<格闘をするクロード・テラスとジャコト> 1902-03年 モダン・プリント オルセー美術館所蔵

コダックのカメラでボナールが撮影した写真も必見。
妻マルトの美しい裸体、家族や親しい友人の姿などがとらえられました。
身近な人々への愛情が込められたひとつひとつのショットにボナールらしさが散見されます。
これらの写真から構想を得た油彩作品もあるそう。

右に写っている義理の弟クロード・テラスは当時「フランスオペレッタの王子」と呼ばれた作曲家。
ボナールの妹アンドレと結婚し、息子が生まれました。
この甥のシャルルはのちに美術評論家となり、歴史的建築についての研究書などを執筆。
ボナールについての著作もあります。

 

ピエール・ボナール <ボート遊び> 1907年 油彩 オルセー美術館所蔵

1907年作の油彩 <ボート遊び> は 278×301 cm の大作です。
小舟を真ん中で切断したような大胆な構図、中間色でまとめられた独特の色調。
絵の中に流れているゆったりとした時間に身を預けると、気持ちがリフレッシュされました。

「西暦2000年の若い画家たちのところに、蝶の翅で飛んでいきたい」という言葉を残したボナール。
もしボナールがこの21世紀に舞い降りたとしたら?
現代の技術を貪欲に受け入れて、さらに独創的な作品を作り上げたに違いありません。

ボナール作品から溢れ出る “日常の小さな幸福” に存分に浸ることのできる本展は12月17日まで。
よく知らないという方にこそ、ぜひ足を運んでいただきたい展覧会です。

 


弊社では本展でも紹介されていた『ヴェルヴ』に収録されたリトグラフや、甥のシャルルが本文を担当した画集からの作品等をご紹介しています。
ボナール存命中に限定制作された希少な版画です。
前述の<ボート遊び>の一部分を切り取ったものなど、飾りやすく、お部屋に馴染むボナール作品はとてもおすすめですよ!
気になる作品がございましたら、お早目にお問い合わせくださいませ。

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(K・T)