サン=テグジュペリ『星の王子さま』

Saint Exupery 50francs

こんにちは。
ブログをお読みいただきありがとうございます。

まだフランスの通貨がフランだった1993年、新しい50フラン札が誕生しました。
それまでのカンタン・ド・ラ・トゥールと比べるとサン=テグジュペリ版はとても色鮮やかになり、国内外で大変な人気を集めましたね!
新札が発行された当初、サン=テグジュペリの名前の綴りに間違いがあった(Éxupéry と大文字の E にもアクセント記号が付けられていた)のも話題になりました。


「象を呑み込んだボア」(特殊インク)や「羊じゃなくて雄羊」(透かし)のデッサンも使われているこの紙幣、お手元にコレクションしている方も多いのではないでしょうか?

 

200以上の国と地域の言葉に翻訳されている『 Le Petit Prince (英:The Little Prince)』は、わが国では内藤濯さん訳の『星の王子さま』が定着していましたが、著作権の保護期間が2005年に満了したため、現在は20数種の新訳が出版されています。
『ちいさな王子』『小さな星の王子さま』『小さな王子さま』『あのときの王子くん』『星から来た王子』『プチ・プランス』などなど…タイトルだけでも本当に様々です。
自分の感性に合った新しい訳書を探してみるのもいいですね。

サン=テグジュペリの他の著作をまだお読みでない方には、1939年に発表されたエッセイ集『 Terre des hommes (人間の土地 / 人間の大地)』がおすすめです。
飛行士サン=テグジュペリの実体験が詳細に綴られていて、一緒に空を飛んでいるような不思議な感覚におそわれます。
空から地球を眺めることを日常とする特殊な職に就いた作者の言葉のひとつひとつが胸にささる本書は、発表同年にアカデミー・フランセーズ賞を受賞しました。
サハラ砂漠に不時着したエピソードは、サン=テグジュペリの哲学が結晶のように輝く『星の王子さま』へとつながります。

 

バオバブの木
バオバブの木

『星の王子さま』を読み返してみると単なるファンタジーではなく、示唆に富んだ物語であることに気づかされます。

例えば、バオバブの木は第二次世界大戦の枢軸国、日・独・伊を指すという指摘があります。

「悪い草は見つけたらすぐに引っこ抜かなければならない。
放っておくと、そこらじゅうにはびこって、根で星に穴を開けてしまう。」

王子さまはこう続けます。
「小さいときはバラとよく似てるけど、バオバブだってわかった時にすぐ引っこ抜くことを習慣づけないと。
面倒くさいけど、やれば簡単なことだからね。」

キツネと王子さま
キツネと王子さま

また、最も印象深いのは王子さまとキツネの会話。
サン=テグジュペリは、砂漠で遭難した時に出会ったフェネックについて『人間の土地』につぶさに書き残しました。
過酷な環境でたくましく生きるこの動物に思いを寄せ、重要な役割を与えることにしたようです。

「仲良くなると、お互いがかけがえのない存在になる」とキツネは教えてくれます。
「ぼく、パンは食べないし、小麦になんて興味なかったけど(…)君は金髪だから、金色の小麦を見るたびに君のことを思い出すよ。小麦畑で風の音を聞きたくなるはずさ。」とも。
有名なフレーズ「心で見るようにしなくちゃ。大切なものは目に見えない」は、キツネが王子さまに最後に教えてくれた秘密。
とてもシンプルだからこそ、万人に語り継がれる言葉となりました。

 


8月のギャルリー・アルマナック吉祥寺では「星の王子さまと世界の絵本・挿絵展」を開催中。
『星の王子さま』のリトグラフの他にも、
アナトール・フランスの短編集『クリオ』のためのミュシャの挿画、
ローランサンが手掛けたルイス・キャロル『不思議な国のアリス』などを額装し、展示販売しております。

いわゆる大作ではありませんが、書物の世界を美しく彩る絵の中にきっと貴方の宝物となる一枚が見つかるはず。
ご自分やご家族へはもちろん、“かけがえのない”ご友人への贈り物にも最適です。

展覧会詳細はこちら/『星の王子さま』リトグラフ詳細はこちら

『星の王子さま』についての過去ブログもぜひ併せてお読みくださいませ。
2015.12.01 12月「星の王子さまと世界の古絵本・挿絵展」(併催「藤田嗣治 遺作展」)が始まりました
2015.12.15 星の王子さまが愛したとげだらけのバラ

(K・T)