ミュシャ挿画本『クリスマスと復活祭の鐘』のご紹介

アトリエ・ブランカ 軽井沢ブログをお読みいただきありがとうございます。
本年もあとわずかとなりました。

昨日、12月9日(日)をもちまして、弊社軽井沢店は今年の営業を終了しました。
今年も大勢のお客様にご来廊いただき、誠にありがとうございました。
来年4月の開廊まではぜひ吉祥寺店弊社HPをご利用くださいませ。

吉祥寺店は12月30日(日)まで「クリスマス・アートフェア」を開催。
皆様のお越しを心よりお待ちしております。

本日ご紹介する『クリスマスと復活祭の鐘』はミュシャの3大挿画本のひとつと言われています。
『トリポリの姫君イルゼ』
『主の祈り』
については、以前のブログもぜひお読みください!

1900年に252部限定で刊行された全80頁の挿絵、装飾、飾り文字をミュシャが担当。

著者のエミール・ジェバール(1839-1908)は古代ギリシアとイタリア・ルネサンス期の研究で知られる美術文芸評論家。
アカデミー・フランセーズの会員にも選出されています(1904年)。
弊社所蔵の『サンドロ・ボッティチェリとその時代』のテキストも執筆。
本書ではキリスト生誕を前後する約百年間の出来事が神秘主義的な文章で綴られました。

半円形の窓に物語の場面が描かれ、その周囲を植物で埋め尽くしたデザイン。
1ページ1ページの精緻さに思わずため息がもれる、アール・ヌーヴォー芸術の結晶です。

弊社では選りすぐったページの額装品をご提案しています。
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ただいま吉祥寺「クリスマス・アートフェア」にて展示中の72ページの挿絵部分をご覧ください。

写真のモデルが描かれているのがわかります。

19世紀半ばにカメラが発明されると、画家たちは制作のために写真を活用するようになりました。
ゴーギャン、ドガ、ロートレック、ボナール…
(ブログでもご紹介した国立新美術館のボナール展でも沢山の展示がありましたね!)
ミュシャもそのひとりで、アトリエでモデルを撮影した写真が数多く残されています。

パリ時代のミュシャは、特定の作品のためにポーズをとってもらうことはありませんでした。
即興的に撮影したものを多数保存し、新たに作品に取り掛かるときに主題に適したものを選んでいたそう。
人工的な光を使わず、現像も自分自身で行いました。

ちなみに表紙の女性が持っている帯のような布に書かれている言葉はラテン語。
“Glória in excélsis Deo et in terra pax homínibus bonæ voluntátis.”
(天のいと高き所には神に栄光、地には善意の人に平和あれ。)
新約聖書「ルカによる福音書」第2章14節にあり、讃美歌の歌詞にもなっています。

世紀末のパリ、装飾芸術の最高峰であったミュシャによる美しい挿画本。
聖なる夜にふさわしい傑作です。

弊社取り扱いのミュシャ作品一覧はこちら

(K・T)