透かし模様の繊細な細工が美しいレースの歴史

エリザベス1世

こんにちは。
ブログをお読みいただきありがとうございます。

洋服や雑貨やインテリアなど、私たちの日常にすっかりと溶け込んでいるレース。

繊細でエレガントな細工がフェミニンな雰囲気を与えるためか、現代では女性的なイメージが一般化されているレースですが、その発展は500年近く前のヨーロッパ。
当時は男女問わず身につけていました。

当時はどのようにまとっていたのでしょうか。
こちらはイギリスの基礎を築きあげた君主エリザベス1世(1533-1603)の肖像画。
国家を絶対王政の頂点へと導いた立役者です。
その絶大な権力を象徴する豪華な装身具の一つが、首周りや襟元に施されたレース。
君主の威厳を引き立てるのに欠かせないアイテムだったのでしょう。

では、このレースの歴史はいつから始まったのでしょうか。
実は、その発祥は諸説あり、レースの起源は明確には分かっていませんが、私たちが現在レースと呼んでいるものが発達したのが恐らく1500年代中頃。
ルネッサンスや大航海時代を迎えて交易が盛んになった、イタリアのヴェネチアからヨーロッパ各地に広まった説が有力視されています。

現代では機械化により多様な模様のレースの大量生産が可能になりましたが、当時は熟練した技術と気の遠くなるような時間をかけて手作業で編まれたレース。
もちろん、王侯貴族のみが身に付けられた贅沢品でした。

レースを身につけた17世紀の男性
レースを身につけた17世紀の男性

17世紀になると、さらに華やかで豪華なレースが誕生しました。
特筆すべきは、男性ファッションとしての需要。
甲冑の上から重ねた付け襟や、袖口などにさりげなくレースがあしらわれており、この服装で戦闘に赴いたと思うと何だか不思議ですね。
その後、ますます多くの貴族が贅を凝らした美しいレースを求め、特にフランスではヴェネチアからのレース輸入が国家財政を逼迫するほどだったとか。 
優雅で軽やかなロココ様式が登場した18世紀は、非常に繊細でエレガントなレースが流行。
マリー・アントワネットをはじめ高貴な女性たちの間でレースは必須の装飾アイテム。
前世紀から比べると、レースの質感がずいぶん柔らかくなっているようです。
女性ファッションとしての可憐なイメージをレースが持つようになったのはこの頃からかもしれません。

その後、フランス革命や産業革命の影響により、手作業で丁寧に編まれる伝統的レースはその後徐々に衰退。
しかし、機械での大量生産が可能になった現在でも、温かみのあるハンドメイドレースは伝統工芸の一つとしてヨーロッパ各国で守り継がれています。

当店では、ヴィンテージのハンドメイドレースを各種入荷。
ハンカチやドイリー(卓上敷物)としてももちろんお使いいただけますが、額装してもとても素敵なインテリアになります。

レースのホール部分や糸の凹凸により生まれる陰翳は、絵画では出せないレースならではの独特の質感。
一つ一つ表情の違うぬくもりのあるレースをお手元に是非いかがですか。

(R・K)