フランス国家最優秀職人章M.O.F


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昨年、東京国立博物館の表慶館にて「フランス人間国宝展」が開催されました。
フランス語で人間国宝はMaîtres d’Art(メートル・ダール)。
“芸術の巨匠”と直訳されます。
日本の重要無形文化財認定制度(通称「人間国宝」)にならい、フランスで1994年に制定された称号です。

伝統芸術に対する真摯な姿勢や卓越した技術が認められた数少ない職人に与えられ、2016年現在までの認定者は124名に上ります。

本展では、陶器や革細工、金銀細工、扇、折り布など多岐にわたる工芸分野から、個性豊かな15名の匠が生み出した手仕事の技が一堂に結集。
代々の伝統を継承しながら、革新を目指す職人たちの気概を感じる展覧会でした。

「フランス人間国宝展」に出品された15名の作家

フランスでは、こうした伝統的な手工芸や職人技術をかけがえのない財産と捉え、後世へと受け継いでいこうとする運動が国を挙げて盛んです。
そのムーブメントの先駆けとして最初に立ち上げられた勲章。
それが、「フランス国家最優秀職人章」。
Meilleur Ouvrier de Franceのイニシャルを取り、通称M.O.Fと呼ばれる称号です。

M.O.Fの始まりは20世紀初頭。
産業革命の発展による機械化が進み、大量生産で作られた安価な製品が世に溢れるようになったこの時代。
美術批評家のルシアン・コルツは、機械化によって手工業が廃れ、伝統を学ぶ場や伝統を継承する使命感が薄れていく将来に不安を覚えていました。
そこで彼は1913年、職人たちが自らの技術に誇りを持ち、また手工芸に対する人々の意識を改革できるよう、職人芸を競わせる全国大会の開催を政府に提唱します。

英国人デザイナーのウィリアム・モリスが同じ精神のもとに19世紀末展開した「アーツ&クラフツ運動」の影響もあったかもしれません。

ところが、折しも第一次世界大戦が勃発。
それにより、開催に向けた働きは頓挫してしまいました。
しかし戦争が終結すると、政府は大会の開催を推し進め、ついに1924年10月。
パリの市民ホールで第一回大会が開催され、144の手工芸が章を授けられました。
この大会の大きな成功と反響を受け、1927年に第2回大会が開催。
以降、3-4年ごとに開催され、2015年の大会で25回を迎えています。

受賞に求められるものは単に優れた技術力だけではありません。
伝統への敬意に加えて、技術を習得した上での高い革新性、美意識も考慮され、さらに限られた時間と素材から創作する的確性も判断基準。
厳しい審査を勝ち得て輝かしきM.O.Fの称号を得た受章者たちは、大きな誇りと自信を手にすることでしょう。

初代MOF協会会長のカストラン

そうした受賞者の名誉や功績を風化させないように、そしてコンクールの価値を存続させていこうと、第一回大会から数年後の1929年。
全国M.O.F協会が設立されました。

① 職人技術や知識を地域社会と共有していくこと、
② 受賞者同士の結束や交流を保ち続けること、
③ 未来を担う若い世代の育成に努めること、
という理念のもと、協会は現在もその大きな役割を社会に提供しています。

グラヴュールで文様を削りだす職人

バカラやサン・ルイ、ラリックなど、言わずと知れた最高級のガラスブランドも、M.O.Fの称号を持つ多くの職人たちの手によって、その美しい芸術作品を日々生み出しています。

M.O.F職人を多く輩出していることはブランドのプライドや高い品質の基準ともなっており、いかに重要視されている勲章かがわかりますね。

およそ100年の歴史とともに発展を続ける「フランス国家最優秀職人章(Meilleur Ouvrier de France)」。
彼らの手によって手がけられた、バカラやサン・ルイの名品は、弊社でも数多くお取り扱いしております。

機械生産では決して味わえない、職人たちの温もりと情熱が伝わるお品で普段の生活を少し贅沢に楽しんでみませんか。

バカラ「ワイングラス赤ペアセット」 サン・ルイ「ワイングラス:ティスル」 サン・ルイ「シャンパングラス:ティスル」
サン・ルイ「ワイングラス:フローレンス6客セット」 バカラ「ワインクーラー」

(R・K)