20世紀のモード誌や文芸書物を華やかに彩ったイラストレーター シャルル・マルタン

 

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20世紀の初頭。
女性がウエストをきつく締めたコルセットから解放され、ファッションを自由に楽しむようになり、ポール・ポワレやココ・シャネルらファッションデザイナーが華々しく登場したファッション革命期。

お洒落好きの女性たちをうきうきさせる高揚感に満ちた、明るく軽快な「動き」のあるイラストレーションでモード・ファッション雑誌の頂点に立ったイラストレーターがいました。

シャルル・マルタン(1884-1934)

南仏の古都モンペリエ出身のマルタンは、美術学校でイラストレーションの魅力に目覚めキュビスムやロシア構成主義から影響を受けた独特の画風で人気を博した画家。
彼が活躍したモード雑誌「ジュルナル・デ・ダム・エ・デ・モード」や「ガゼット・デュ・ボン・トン」は、流行ファッションに身を包んだ女性のイラストをポショワール版画で仕上げた”ファッション・プレート”を毎号収録。
大胆な構図やデフォルメで描かれたモダンなイラストレーションは人々の心を虜にし一大センセーションを巻き起こしました。



8/30まで渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムにて開催中の
「エリック・サティとその時代展」ではこの気鋭のイラストレーター、シャルル・マルタンの代表作の一つ「スポーツと気晴らし」が展示されています。


この「スポーツと気晴らし」は、モード雑誌の発行人である編集者のリュシアン・ヴォージェルが企画し、900部限定で1914年に出版された楽譜集。
余暇の楽しみ方を主題に、テニスやヨット遊びなどのスポーツと、観劇やカーニヴァルなど当時の上流・中流階級が謳歌したレジャーをマルタンが描き、各テーマに合わせた音楽をエリック・サティが作曲しました。

マルタンの描く伸びやかで大胆な構図の挿絵に、サティの織りなすピアノ独奏曲がコラボレーションするという斬新な本作はまた、当時の風俗を知る上での稀少な資料でもあります。

サティの楽譜「カーニヴァル」 マルタンのイラストレーション「カーニヴァル」
サティの楽譜「ヨット遊び」 マルタンのイラストレーション「ヨット遊び」

以下のリンクよりサティの曲をお聴きいただけます。

 
アール・デコ時代を象徴するイラストレーターのシャルル・マルタン。
大変面白いことに、哀愁漂う夢見がちな美人で知られる大正モダンの画家、竹久夢二と同じ生没年なのです。
さらに二人の共通点は、官展や美術展での評価に左右される格式高い画壇ではなく、雑誌や書籍装丁など人々の日常を彩る場で名声を獲得したこと。
画風も生き方も全く異なるマルタンと夢二ですが、似通った部分が多いのが何とも不思議ですね。

モード・ジャーナリズムについての詳しいブログ記事はこちら
>ファッション・ジャーナリズムの歴史<前編>
>ファッション・ジャーナリズムの歴史<後編>

(R・K)