三鷹市美術ギャラリー「竹久夢二 大正ロマンの恋と文展」


なで肩のかぼそい体躯に哀愁を含んだ瞳。
今にも消えてしまいそうなほど儚げなのに、一度見たら忘れられない奥ゆかしい美人像。
そんな甘美な郷愁と叙情に満ちた作品によって大正期を中心に活躍し、当時の若い女性に圧倒的な人気を誇った画家がいました。

今年生誕130年を迎えた竹久夢二(1884-1934)です。
その記念年に合わせ三鷹市美術ギャラリーで開催された、「大正ロマンの恋と文」展に行ってまいりました。

展覧会は、三鷹市民で夢二とも親交の深かった故・高相俊郎氏所蔵の夢二のコレクション(膨大な夢二の書簡や遺品)を中心に展示し、「恋と文」というテーマらしく、夢二が恋した女性達ごとのセクションに分かれた構成。

特に展示の大部分を占めた夢二の書簡は、携帯やパソコンもない時代に書かれた恋する男女のもどかしい心の機微が見え隠れしていて非常に心を動かされました。

今回の展示でメインにフォーカスされた”書簡”、つまり夢二の残した「言葉」。
その中で特に個人的に印象的だったのが、この一節。

“彼女の山中湖のような青いしずかな―
しかしいつ波をたててあふれるか知れない熱情をたたえた眼(一部)”

そう夢二が綴った想い人は、23歳で亡くなった最愛の女性・彦乃でした。
女性の眼を湖に例えるあたり、詩歌や小説など文才にも長け、多くの女性との出会いと別れを繰り返した夢二らしい表現です。

ところで今回の夢二の文のように、芸術家が書いた「文字」に着目した若い女性アーティストをご存知ですか?
荒井美波さんという武蔵野美術大学ご出身の方で、文豪の自筆原稿を針金で立体的に”なぞる”アートで注目されています。
本を読んでも分からない作家の筆致や赤字までが精巧に再現され、それが立体的に浮かび上がることでより生々しくリアルな感じがします。

 

直筆の手紙や原稿、その制作過程に隠された人間性にスポットを当てた点で
今回の夢二展にも共通するところもあるかもしれませんね。

9/23付の読売新聞でも紹介されていましたが、正規の美術教育は受けず独学で人気を得た夢二に関する専門の研究は今まで数少なく、今年の生誕記念を機に「竹久夢二学会」なるものが先日設立されたそうです。
今後本格的に夢二の学術的研究がなされるそうで、どんな発見や報告があるか大変楽しみですね!

当店所蔵の竹久夢二作品はこちら

(R・K)