ミロと詩人たち

ブログをお読みいただきありがとうございます。

現在、Bunkamura ザ・ミュージアムにて開催中の「ミロ展」はもうご覧になりましたか?
いよいよ4月17日(日)までとなりました。
公式ページはこちら

ミロの自由な感性から生み出された作品は、不自由な今の時代にとても重要な存在であるように思います。
とは言え、小難しい解釈などは横に置いておいて、純粋に多様な作品そのものを楽しんでいただきたい展覧会です。

日本文化から影響を受けた墨画や巻物から、陶芸などの立体作品まで見どころはたくさんありますが、ミロの画と詩のマリアージュに注目してみましょう。

会場に展示されていた詩画集は以下の4冊。

トリスタン・ツァラ 『独り語る』(1950年,Maeght Éditeur)
ポール・エリュアール 『あらゆる試練に耐えて』(1958年,Gérard Cramer)
瀧口修造 『手づくり諺』(1970年,Ediciones Poligrafa)
瀧口修造 『ミロの星とともに』(1978年,平凡社)

シュルレアリスムの詩人たち  La Gazette Drouot より


トリスタン・ツァラ
(1896-1963,写真中央下)は、ルーマニア出身、フランスで活躍した詩人。
ダダイスムの創始者としても知られ、後にはアンドレ・ブルトンのシュルレアリスム運動にも参加しています。
芸術家との親交も深く、ミロ以外にもピカソやマティス、マッソンらの挿画で詩集を出版しました。

ミロとは
『旅人たちの木』(1930年,Éditions de la Montagne)
『反頭脳』(1949年,Bordas)
でもコラボレーションを組んでいますが、『独り語る』は最高傑作と言えるでしょう。

 

ローマ数字などの形からインスピレーションを受けた奔放なミロの筆遣いとともに、ツァラの旋律を味わう極上の贅沢。

p.93
libre à toi libre à moi
de n’avoir ni joie ni flamme
tous ensemble et chacun pour soi
piaille fille de personne
<試訳>
君の自由 僕の自由
喜びも炎も持たぬこと
みんな一緒に、またそれぞれに
誰の子でもない泣き虫娘


ポール・エリュアール
(1895-1952,写真中央上)もダダイスム、シュルレアリスムの重要人物。
最初の妻ガラ(1894-1982)がのちにサルバドール・ダリと結婚したことが知られていますね。

代表作の筆頭は、ナチス占領下の1942年に発表した詩集『詩と真実』の巻頭に収められた「自由」。
この詩は当時のフランス国民に大きな希望を与えました。
今なお、また今だからこそ、世界中の人々の心の糧にしてほしい詩です。
(ご興味のある方はぜひ検索してみてください)

1930年の改版となる『あらゆる試練に耐えて』のために、ミロは木版画80点を制作しました。
版木は全部で233!
依頼を受けてから10年以上の歳月がかかり、その完成を見る前にエリュアールが他界したことは残念ですが、どの頁も素晴らしい出来映えです。
(画像はすべて moma.org より)

 



瀧口修造
(1903-1979)は美術評論家、詩人として日本の前衛芸術を牽引しました。
瀧口が執筆した評論書『ミロ』(1940年,アトリヱ社)はミロについての世界初の単書とされています。
1966年、国立近代美術館の大規模展のために来日したミロに詩を捧げた瀧口。
その詩のタイトルが “ En compagnie des étoiles de Miró(ミロの星とともに) ” でした。

この時から直接の交友を深め、二人は二つの詩画集を共同制作します。

『手づくり諺』は瀧口の詩を7カ国語(日本語、英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語、カタロニア語)で発表した詩画集。

invaluable.comより

『ミロの星とともに』には、瀧口がミロからインスピレーションを受けて綴った詩が4篇集められました。
蛇腹の形状が美しいですね。

EleanorSuggettさんTwitterより

シュルレアリスムの画家というと、マグリットやダリの名が先に思い浮かびますが、アンドレ・ブルトン(1896-1966,シュルレアリスム創始者,前掲写真左)はミロこそが最もシュルレアリストな画家だと評したそうです。
(ミロはブルトンの『La Clé des champs』(1953年,Les Éditions du Sagittaire)、『Constellations』(1959年,Pierre Matisse)の挿画を担当。)

詩人たちの紡ぐ言葉とミロの画の幸福な融合。
彼らが求めてやまなかった“自由”を描き切ったミロは、その生涯に250冊を超える挿画本・美術誌に関わりました。


 

5月中旬まで、アトリエ・ブランカ吉祥寺では「ミロとピカソ、ダリ」展を開催中。
上述の『独り語る』の額装品やピカソダリのリトグラフポスターなど、新年度を明るく彩るインテリアにぴったりのアート作品を集めました。
お子様の入学・進級祝いなどのギフトにも喜ばれそうです。

ぜひお気軽にご来廊くださいませ。

(K・T)