府中市美術館「マリー・ローランサン展」


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ヴィジェ・ルブラン「自画像」

府中市美術館にて先日開幕した「マリー・ローランサン展」。
淡く柔らかなタッチで女性を愛らしく描いたローランサン(1883-1956)の画業を初期から晩年まで辿る回顧展です。

淡い色遣いながら強く心に残る独特の作風は一体どこから来ているのでしょうか。

それを紐解く鍵が、詩や絵の世界に夢中だったというローランサンが、少女時代に傾倒したマリー・アントワネットの宮廷女流画家ヴィジェ・ルブラン。

なるほど。生涯を通じてローランサン作品にどこか漂う気品や優雅さは模写や研究を続けたロココ時代の宮廷文化からの影響だったのでしょう。

大使夫人の寝室

ローランサンが生きた20世紀初頭は、まさに芸術の革命期。
ピカソやマティス、ジャン・コクトーなど前衛芸術家たちが次々と登場し、ローランサンもまた彼らとの交流や詩人アポリネールとの運命的な恋愛と破局を経験、晩年にようやく訪れた穏やかな生活まで波乱に満ちた生涯を送りました。
そうしたキャリアの中でも、1925年の産業装飾芸術国際博覧会(通称アール・デコ博)での作品展示は誇り高き評価だったことでしょう。

フランス大使館内の「大使夫人の寝室」と題された空間の壁面に、ローランサンが描いた肖像画が飾られたのです。

アンドレ・グルー夫人

ちなみに、その肖像画に描かれたアンドレ・グルー夫人は、当時を代表するファッションデザイナーポール・ポワレの実妹でした。
個人的に今回の展覧会で印象的だった作品が、「狩りをするディアナ」。
輪郭線の曖昧な画風が特徴のローランサンらしからぬ、線のみの表現である銅版画(エッチング)です。

世紀末当時の流行であった妖しい魅力で男性の運命を翻弄する「ファム・ファタール(宿命の女)」をモティーフにした作品。
本作の解説には、「一筋縄ではいかない複雑な魅力を秘めた女性の姿を描き出すという意味では原点とも言うべき作品」と記されており、外面だけでは分からない女性の奥底にある別の一面を形容していたり・・・・
そう考えると、ローランサンが描こうとしたのは見かけの女性そのものではなく”女性の本性”だったのかもしれません。

「狩りをするディアナ」

ピカソやマティスら当時気鋭の画家たちに比べて理論や理屈を語ることにさほど興味を示さず、自らの作品や絵画への姿勢についてあまり多くの言葉を残さなかったローランサン。
しかし、だからこそその幻想的な作品たちはこうして謎めいたまま語り継がれているのかもしれませんね。 

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(R・K)