エミール・ガレ「蝶と湖水風景文ランプ」のご紹介

エミール・ガレ「蝶と湖水風景文ランプ」

生産国:フランス
制作年:1900年頃
技法:被せガラス、酸化腐蝕彫り
(シェードと本体側部に陽刻サイン)

こんにちは。寒い日が続いていますね。
先週は東京でも大雪が降り、20年ぶりに20cmを超える積雪でしたね。
私も家から一歩も出ずにしんしんと降り続く雪を窓から眺めていました。
今週末も雪の予報が出ているようでまだまだ寒い日が続きますが、暖かな春が待ち遠しいですね。

さて、作品紹介第二回目の今回は、アール・ヌーヴォーの時代にガラス工芸家や家具デザイナー、そして会社経営者としても手腕を発揮し、いまだ高い人気を誇るエミール・ガレのランプをご紹介しましょう。
こちらは昨年末の展示替えで当店でお披露目となりました全長 68.2cm の「蝶と湖水風景文ランプ」。

非常に存在感のある大きさですが、優しく包み込むような丸いシェードと、そのシェードからベース部分へすっと伸びたボディの中でほんのり色づく仄かな光によって他の家具やアンティークともなじみ、調和を生み出します。
アール・ヌーヴォーという国際的な美術運動が自然界への回帰をテーマにしているからでしょうか。

デッサンをするガレ

エミール・ガレはフランスのロレーヌ地方(フランス北東部)のナンシー生まれ。
風光明媚で自然が豊かなこの場所で、幼い頃から自然をこよなく愛し、よく草花をスケッチして育ちました。
お祖父さんは有名な博物学者だったそうです。
その後、ドイツ留学などを終えたガレは、ガラス器や陶器の卸売業者であった父親の事業を引き継ぎます。
ガラス工芸家としてのガレのキャリアのスタートです。

転機が訪れたのはパリで1878年に行われた万国博覧会。
出品作の受賞を機に注目を集め、以降ガラス芸術の分野での地位を確固たるものにしていき、1900年にはフランスで最も権威あるレジオン・ドヌール勲章を受章します。

 

エミール・ガレ「蝶と湖水風景文ランプ」

ガレの芸術が最も開花していた頃に制作された本作は、同じ技法を用いながらシェード部分とベース部分の表現が対照的です。
まず、シェードの蝶や草花はズームアップしたような近景のフォルムで大きく幻想的に浮かび上がらせています。
一方、ベース部分に広がる湖水風景は遠くから眺めたように捉えられ、まるで風景画のように写実的。
両者のバランスが非常に興味深い逸品です。

用いられている技法は<被せガラス>と<酸化腐蝕彫り>。
<被せガラス>とは、ある色ガラスの上に別の色ガラスを重ねること。
ガラスが溶解しているうちに行うこの作業は、徐冷時の破損を防ぐために、重なり合う色層の膨張係数を合わせねばならないため、高度な技術を要します。
<酸化腐蝕彫り>は、模様を残す部分をワックスでマスキングし、酸化液に浸けこみ腐蝕させて彫り込む技法です。
これらの複雑な技法が、ガラスに立体感が生んでいますね。

当店では、本日ご紹介したランプ以外にも、小瓶から卓上ランプまで幅広くガレ作品をお取り扱い。
また、ガレの他にも、同時代に活躍したドーム兄弟ミューラー兄弟シュナイダー兄弟など
アール・ヌーヴォーからアール・デコの時代を華やかに彩った芸術家の作品も数多くご覧いただけます。

常時数点を展示しておりますので是非お気軽に足をお運びくださいませ。
また、ご質問などございましたらお気軽にお問い合わせください。

(R・K)