ルネ・ラリック「ランプ:SIX DANSEUSES」のご紹介

ルネ・ラリック「SIX DANSEUSES」
制作年:1931年
技法:フロスト
刻印:底部に陰刻サイン “R.LALIQUE”
サイズ:W23cm×D23cm×H25cm

こんにちは。
ブログをお読みいただきありがとうございます。

現在、吉祥寺店では企画展「マティス展」が開催中です。
先月、8月のマティス展開催をご来店くださったお客様方に告知した際のこと。
「来月はマティスを特集します」とお伝えしたところ、「ああ、あのダンスの画家?」というご返答をたくさんいただきました。

アンリ・マティス「ダンス」(1909年)

マティス本人がどう感じていたにせよ、
後世の人々にはマティスの代表作=ダンス、という認識が高いのでしょうか。
お客様との何気ない会話でしたが、そういった私たちのイメージがいつから形成されたのか、
そしてそれは万国共通の解釈であるのか思わず考えを巡らせてしまう印象的なエピソードでした。

さて、本日はその”ダンス”に絡めた稀少なガラス工芸品をご紹介しましょう。

ルネ・ラリック(1860-1945)

 

今回ご紹介する作品は、主にアール・デコ期に活躍したガラス工芸家の巨匠ルネ・ラリックによる
ガラスランプ「SIX DANSEUSES=6人のダンサー」。(ラリックの生涯をもう少し知りたい方はこちら

本作ではすっきりとしたシルエットや、踊り子のまとうドレスのドレープに多用された直線的ラインが
アール・デコ特有でありながら、小花柄や手を伸ばす女性の手の曲線美にはアール・ヌーヴォー的な暖かみが感じられますね。

ラリックは生涯に70点ほどのテーブルランプを手がけたそうですが、本作のようにアール・ヌーヴォー様式とアール・デコ様式が融合した作品も珍しいでしょう。

“6人の女性が互いに手を伸ばし、一つの円のようになる”という、この躍動感あふれるテーマの出自は明確には判明していません。
ですが、前述したマティスの「ダンス」やジャン・バティスト=カルポーの彫刻「ダンス」(オルセー美術館所蔵)、ボッティチェリの代表作「春」などにもモティーフの類似性が見られ、ラリックは古今の芸術家たちの作品から着想を得たのかもしれません。

ジャン・バティスト=カルポー「ダンス」 サンドロ・ボッティチェリ「春」
古代ギリシャ時代の陶器

 

古代ギリシャ神話に登場する、酒と豊穣を司るバッカス神を取り巻く巫女たちや、
精霊ニンフたちが軽やかに踊るともどこか似ており、こうした幻想的なシーンはいにしえより人々の心を捉えたのでしょう。
この”複数の女性が輪になり舞う”という主題は、1920‐30年代の芸術界においては
同じモティーフをリズミカルに並べて一つのデザインを作るアール・デコ様式の風潮にもぴったりと合致。
ラリックは、香水瓶や花瓶、皿などにも積極的にその表現を取り入れました。

その中でも内側から仄かに灯される明かりにより、
踊り子の透き通った姿態が浮き上がるガラスランプの美しさは格別。
お部屋を涼やかに照らす夏の宵にもぴったり、の逸品です。

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(R・K)