12月「マリー・ローランサン展」が始まりました


お待たせいたしました。
12月の企画展「マリー・ローランサン展」が本日より始まりました!

20世紀の初頭、ピカソやマティスら前衛芸術家が活躍していたパリで彼らと直接交流し、刺激を受け合いながら独自の画風を確立した女流画家マリー・ローランサン。

まだ女性が画家として名声を得ることが難しかった時代に、パステルカラーのふわりとした色調と優しい筆遣いで、ローランサンはエコール・ド・パリを代表する画家の一人になりました。
特に彼女の描く官能的な女性像はパリの上流夫人の間で大変な話題となり、肖像画の注文が多かったそうです。

マリー・ローランサンの描く柔らかく穏やかな女性的世界。

それは彼女の眼差しを通すと、描く対象物が全て夢の世界に溶け込んでいくような不思議な世界観。
それでいて、彼女の生み出すロマンティックな女性たちには、何か力強い意志のようなものも感じるのです。
今月は、ローランサンが手がけた貴重な挿画本作品を中心に展示。
出品作品の一部をご紹介いたします。

年季が入ったローランサン挿画本。上から順番にご紹介していきます。

『小動物物語集』 Petite Bestiaire

フランスの小説家マルセル・ジュアンドーが、子供の頃家で飼っていた動物への想い出を綴った短編集。
ローランサンが描いたオリジナルデザインの銅版画8点が収録。
ジュアンドーの記憶の中で生き続ける子犬や子猫、馬、山羊などがローランサンの手により愛らしく表現されています。

出版元:N.R.F出版  制作年:1944年
技法:エッチング  部数:330部


『園遊会』 The Garden Party

ニュージーランド生まれの女流作家キャサリン・マンスフィールドが植民地で過ごした幼少時代の思い出を叙情的に描いた短編小説。
「園遊会」の他にマンスフィールドの主要な短編小説13篇とローランサンによるカラーリトグラフ16点が収録。
この女流作家を個人的にも評価していたローランサンは、本書のために全作品オ リジナルの挿絵を制作しました。

出版元:THE VERONA PRESS  制作年:1939年
技法:リトグラフ  部数:1200部


『クレーヴの奥方』 La Princesse de Cleves

フランス文学史における恋愛心理小説の古典的名作である本作。
ブルボン朝初代の王アンリ2世の治世下を舞台に、夫クレーヴ公への忠誠心と、彼女を慕うヌムール公に対する狂おしい恋慕の情に引き裂かれたクレーヴ夫人の心の葛藤を描いたもの。
本作を手掛けた当時、ローランサンは既に60代の半ば、パリのアパルトマンでひっそりと制作を続けていました。
しかし、その画風からは彼女が画家として出発した当時と少しも変わらぬ瑞々しさが漂ってきます。

出版元:ロベール・ラフォン出版(パリ)  制作年:1947年
技法:カラーエッチング  部数:280部


『椿姫』 Camille

娼婦でありながら、真実の恋に生きようとする主人公マルグリットと青年アルマンの悲恋を描いたロマン小説。
椿の花をこよなく愛したマルグリットの純粋な生き方は時代を超えて共感を呼び、絵画のテーマや舞台劇として、今もなお人々に親しまれています。
50代半ばにあったローランサンはこの本のために自ら水彩画による挿絵12点を制作。
名作「椿姫」をローランサンが優しく初々しさに満ちた世界に描きだしました。

出版元:THE LIMITED EDITIONS CLUB at the Curwen Press  出版年:1937年
技法:コロタイプ  部数:1500部


『不思議の国のアリス』 Alice in Wonderland

少女小説の金字塔ルイス・キャロル著『不思議の国のアリス』。
ローランサンが描いたアリスは私たちが思い描く姿とはかけ離れ、黒髪に格子模様のモダンなドレスを着た少女として描かれています。

出版元:ザ・ブラック・サン・プレス  制作年:1930年
技法:リトグラフ  部数:370部(ヨーロッパ版)

さすが不思議の国の物語。こんなユニークなページもあります。

その他、直筆サイン入りのオリジナル版画や挿画本『フィネットの冒険』、『牧場の十人の娘』など多数ご用意しております。
会期中の皆様のお越しを心よりお待ちしております。

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(R・K)