ミミ・パンソン ― モンマルトルのミューズ

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ユトリロ ミミ・パンソンの家
モーリス・ユトリロ 「ミミ・パンソンの家(雪景色)」

モンマルトルを描いた画家は多数いますが、その筆頭はやはりユトリロ。
古き良き時代のパリの空気が漂う彼の作品からは愛郷の想いが伝わってきます。
「ミミ・パンソンの家」はモンマルトルのシンボルのひとつでした。

アルフレッド・ミュッセの詩や小説の登場人物、ミミ・パンソン。
実在しないのに、どうして家が? と思われる方もいらっしゃるでしょう。
1897年、モンマルトルの芸術家たちがパレードを行った際、ここを「ミミ・パンソンの家」と “決めた” そうです。

 

物語の主人公が神や英雄、王侯貴族から、一般市民になるまでは長い年月を要しました。
19世紀中頃になり、ようやく庶民が自分たちをそのまま投影できる小説が生み出されたのです。
当時のパリジャンたちはミミ・パンソンにこの家を与え、身近な隣人として受け入れることとしたのですね。

さまざまな芸術家が彼女を主題とした作品を残しました。
モーリス・オルドノーのオペレッタ(1915年)、サイレント時代を含め映画化も数回。
ルイ・イカールも、1927年にエッチング作品を発表します。
本作は、パリの夜空とミミ・パンソンの物憂げながらも凛とした姿が完璧に調和した傑作として高く評価されています。

イカール ミミ・パンソン

イカールは他にもオペラや文学を題材にした版画で大衆の心をつかみます。
『赤ずきんちゃん』『カルメン』『蝶々夫人』『椿姫』『眠れる森の美女』『マノン』『ボヴァリー夫人』etc…

ギュスターヴ・シャルパンティエ(1860-1956)作曲の『ルイーズ』(1900年初演)はフランスにおけるヴェリズモ・オペラ(verismo opera)の先駆けとして有名です。
小説同様、オペラでも市井の人々がテーマとなり、主役のルイーズはミミ・パンソンと同じ若いお針子という設定。
バルコニーからはモンマルトルの丘にそびえ立つサクレ・クール寺院が見えますね!

ミミ・パンソン音楽院
ピアノ奥の男性 右側がシャルパンティエ Images Musicales Storiesより引用

『ルイーズ』の大ヒットで財を成したシャルパンティエは1902年、その名も “ミミ・パンソン音楽院” を設立。
職業婦人のために歌、ピアノ、ハープ、ダンス、パントマイムのレッスンを行いました。
労働契約書を見せれば無料で参加できたため、3ヶ月で2000人もの希望者が集まったそう。
当時の女性たちが、自らの力で人生を切り開こうという熱気が伝わってくるエピソードです。

ギャルリー・アルマナック吉祥寺 イカール展

「ルイーズ」は「ミミ・パンソン」と共に、今月、ギャルリー・アルマナック吉祥寺のルイ・イカール展でご覧いただけます。
アールデコ期に社会進出を果たした、自立した女性像の数々。
その美しさとしなやかさは100年経った現在でもますます輝きを増しているように感じます。

皆さまのご来廊を心よりお待ちしております。
HPでも作品をご覧いただけます。
それぞれ現品のみの取り扱いですので、気になる作品がありましたらお早めにお問い合わせくださいませ。

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(K・T)