【9月企画展】吉祥寺「シャガール展」、軽井沢「イカールとベル・エポックのパリ展」開催中!

お待たせいたしました。
台風や大雨など移り気な天候の続いた8月もまたたく間に過ぎ去り、ギャルリー・アルマナック吉祥寺およびアトリエ・ブランカ軽井沢の店内は再び模様替え。
新たな装いで生まれ変わった両店の今月の展示をご紹介します。

ギャルリー・アルマナック吉祥寺企画展「マルク・シャガール版画展」

 
待望の、と言っても過言ではないでしょう。
ギャルリー・アルマナック吉祥寺では1年3か月ぶりにシャガールを特集。
今月の店内はどこか幻想的な雰囲気が漂い、愛の画家シャガールが奏でる色彩の音色で溢れているようです。


シャガール「バッカス神の物語と神殿」

鮮やかな色調が重なり合い共鳴するこちらは、古代ギリシャの物語『ダフニスとクロエ』の一場面。
親交のあった出版人テリアードからの依頼で、西洋文明の礎ともいえる大作に挑んだシャガールは、物語の各場面を表現した42点のリトグラフを散りばめた挿画本制作に着手しました。
ムルロ工房の名摺師ソルリエと協力し、数年の歳月を費やし完成した本作は、1961年にわずか270冊という稀少部数で出版。
今日に至るまで、挿画本界の最高傑作の一つとして高く評価されています。
人類の普遍的なテーマである「愛」や「恋」を主題に、若い男女が織りなす純朴なストーリーは、シャガールの世界観ともよく調和し観る者を恍惚とさせる不思議な力があります。 


 

当時ロシア帝国の支配下にあった小さな村ヴィテブスクで厳格なユダヤ人の両親のもと誕生したシャガール。
人口の大半がユダヤ教徒であったその村で幼少期を過ごした彼にとって、その教義は常に身近な存在であり、シャガール芸術に大きな影響を与え続けるインスピレーション源でした。

そんなシャガールがイスラエルのエルサレムに建設されたユダヤ教教会内部のステンドグラス制作を手がけたのは1959年のこと。
創作活動を支える信仰に携わる大仕事には格別な思い入れがあったことでしょう。

本展ではその完成を記念し1962年に制作されたリトグラフを出品。
旧約聖書を主題にした厳かな12枚のステンドグラスは今も神々しい光を放ち続けています。

シャガール「シメオン族」
シャガール「ステンドグラスのための下絵」
シャガール「レヴィ族」

エルサレム・ウインドウの詳細はこちら


シャガール「サーカス」 シャガール「アクロバット」

 

シャガールが生涯にわたり、積極的に描いた主題の一つがサーカス。
曲馬師や軽業師が芸を繰り広げる夢のような空間は、シャガールが幼少から慣れ親しんだユダヤ教の一派ハシディスム派が重んじる神秘主義的な歌や踊りの習慣に深く合致していたと言われています。

重力や私たちを束縛する日常のしがらみから逃れるように、人物や動物が、ふわふわと優しく宙を舞うシャガールの世界。

 “これだけが私のもの  私の魂の中にある国・・・・”(「ポエム」より)
と語ったシャガールが、故郷への追憶や最愛の妻ベラとの思い出とともに創り続けた作品たちを是非ご堪能くださいませ。

ギャルリー・アルマナック吉祥寺 店舗詳細


アトリエ・ブランカ軽井沢企画展「ルイ・イカールとベル・エポックのパリ展」

そして、軽井沢にある姉妹店アトリエ・ブランカでは、アール・ヌーヴォー芸術が隆盛を極めた1800年代末の≪ベル・エポック(美しき時代)≫からアール・デコ芸術様式が席捲した1920-30年代、≪レ・ザネ・フォル(狂乱の時代)≫までの激動の時代を舞台に描かれた作品を特集。

これほど波乱と変化に富んだわずか40年ほどの時代がかつてあったでしょうか。
近代文明の恩恵を享受し、道楽に酔いしれた忘れがたきベル・エポックのとき。
その後産業革命により力を得た西洋列強が他国の領土を蝕みはじめ、やがて訪れた第一次世界大戦・・・
そして、ヨーロッパを焦土と化した戦争がようやく1919年に終結し、人々が平和の来訪を祝い、夜ごと華やかな宴を繰り広げた狂騒の20年代が幕を開けました。

彼らが再びその繁栄を謳歌し愛した1920年代のパリ。
それは大恐慌や第二次世界大戦が到来する前の”束の間の喜び”であったにもかかわらず、パリが最も輝いていた時代として現代も私たちを魅了し続けるのです。

出品作品の一部をご紹介します。


スタンラン「ヴァンジャンヌの殺菌牛乳」

産業革命の発展による機械化で、大量生産が可能になったベル・エポックの時代。
自由競争が進んだ資本主義経済下ではモノの流通のため、必然的に宣伝や広告の需要が高まり、商業ポスターが誕生します。
中でもミュシャやシェレ、ロートレックやスタンランが制作した、当時最新の印刷技術である石版画(リトグラフ)によるポスターは大きな話題に。
物品の宣伝というポスター本来の目的を超える新しい芸術分野を切り開きました。
猫たちにミルクを与える女の子が描かれた本作は、牛乳ブランド「ヴァンジャンヌ」が販売していた牛乳の宣伝ポスター。(詳しくはこちら
量感のある描線と大胆な色遣いで庶民の生活を活き活きと伝えていますね。


イカール「ミミ・パンソン」

こちらは、第一次世界大戦後、都市生活が進んだアール・デコ芸術の時代に一世を風靡したルイ・イカールの代表作「ミミ・パンソン」。
ミミ・パンソン(Mimi Pinson)は、実在の女性ではなく、もともとはロマン主義の作家アルフレッド・ミュッセの詩に登場した架空の人物。
彼女は作品の舞台を越えて、伝説的な美女としてアイコニックな存在となり、”モンマルトルに住みボヘミアン的な生活を愛した若いお針子”という設定で、様々な芸術家の作品に描かれました。
きっとミミ・パンソンは、1920年代の女性を体現するような妖艶さと奔放さを合わせ持つ自由な女性の象徴だったのでしょう。
イカールの作品では、美しいパリの夜景を背景にモン・マルトルの丘に佇む蠱惑的なミミ・パンソンの姿を描き出しています。

その他、ミュシャやローランサンなどパリで活躍した芸術家作品約30点を出品。
普遍的な美の宿る芸術の都パリの魅力を是非再発見くださいませ。

両展とも会期は9/30(金)まで。多くの皆様のお越しを心よりお待ちしております。

ギャルリー・アルマナック吉祥寺 店舗詳細
アトリエ・ブランカ軽井沢 店舗詳細

(R・K)