エミール・ガレ「スグリ文ランプ」のご紹介

こんにちは。
ブログをお読みいただきありがとうございます。

毎日寒いですが、比較的お天気な日が続いていますね。
乾燥する季節ですので、皆様風邪など引かれませんよう十分気をつけてくださいね。

さて本日は、アール・ヌーヴォーを代表するガラス工芸家の大巨匠、エミール・ガレのランプをご紹介します。
ガレの大きめのランプは一度ご紹介していますが(詳しくはこちら)、今回のランプは高さ約30cm程の小ぶりなサイズとフォルムがとても愛らしい一品。
小さめで淡い色味なので他の調度品ともよく合います。

制作年:1900年頃
技法:被せガラス、酸化腐蝕彫り
サイズ:H32.4cm×W25.6cm×D25.5cm
シェードと本体側部に陽刻サイン

フランス・ロレーヌ地方のナンシー村。
緑豊かなこの場所で生まれ育ったガレは、幼い頃から自然への強い愛着がありました。
ガレはガラス製品の卸売工場を営む両親の教育方針のもと、高等学校で哲学や古典などを学び高い教養を身につけます。
また、学校の外では草花の観察やデッサンを熱心に行い、植物学者であった祖父譲りの非凡な才能を見せ始めます。
こうした環境が徐々にガレ独自の美的感覚を育んでいったのでしょう。

ところで、彼の作品でよく挙げられるキーワードが「もののあはれ」。
国語辞書では、「自然・人生に触れて起こるしみじみした内省的で繊細な情趣」と定義される、人生の機微や自然の移ろいなどに触発されて五感を通して生ずる日本文化独特の美的概念です。

ガレの活躍した20世紀末は、ヨーロッパでジャポニスムと呼ばれる日本文化が席巻した時代。
古より自然と融合し共生してきた日本人にとって、自然を題材にした美術品が存在するのはごく普通のこと。
しかし、自然は人間によって支配されるものと考えてきた西洋文化にとっては、日本人の美意識というものがいかに斬新に思えたことでしょう。

「ジャポニスム」や「自然回帰を謳い曲線を多用したアール・ヌーヴォー様式」、そして「ガレの芸術性」は自然事象をモティーフにした点で共通しています。
さらに、ガレの芸術性は日本人の感性・精神性に通ずると評価されます。

それは何故でしょうか。

(北澤美術館HPより)

それは、作品の表面に単に日本的要素を加えたものではなく、ガレの代表作品ともいえるランプ「ひとよ茸(一晩限りで傘が溶けて土に還るきのこ)」や壺「過ぎ去りし苦しみの葉(枯葉が舞い落ちる様子を表現)」に見られるように、散りゆくからこその刹那的な一瞬に美を見出した点が、命あるものの儚さや脆さを美と感じる「もののあはれ」の情感と符合するからなのです。

ガレの工房扉に刻まれていた「我々の根源は、森の奥にあり」という言葉は、思索と創作の果てに辿り着いたガレの哲学的境地なのでしょうか。


本日ご紹介する「スグリ文ランプ」は、西ヨーロッパ原産の西洋スグリがモティーフ。
スグリは丸房の実をぶらさげてそこから花を咲かせる植物で、花言葉は「わたしはあなたを喜ばせる」。
適度な酸味と甘みがあり、非常に美味しい夏の植物です。
酸味と甘みのバランスがちょうどいいように、ランプ全体にかかるピンク色も甘すぎずきつすぎず、色のバランスも絶妙な逸品。
この微妙な色合いのピンクはガレ作品では非常に珍しいんだとか。


現在、こちらのランプは当店にてご覧いただけます。
ご質問などございましたらお気軽にお電話(0422-27-1915)またはこちらよりお問い合わせください。

(R・K)