ミュシャとL.U.ビスケット
こんにちは。
ブログをお読みいただきありがとうございます。
ミュシャを一躍有名にしたポスター「ジスモンダ」については過去ブログでもご紹介しました。
>2019/04/29 サラ・ベルナールとミュシャ
ミュシャによるサラ・ベルナールは公演ポスター以外にも多数あります。
弊社所蔵の「遠国の姫君」もそのひとつ。
「遠国の姫君 La Princesse Lointaine」のヒロインに扮したサラが描かれています。
ルフェーヴル・ユティル社のビスケットの広告パネルとして制作されました。
サラの筆跡によるユニークなメッセージが画面左下部に刷られています。
“ちっちゃなLUビスケットひとつより素敵なものはないわ。
…あら、違った、ふたつあればもっといいわ”
なんともチャーミングなつぶやきですね!
また、周囲の装飾枠に使われているハートに気が付かれましたか?
ミュシャにとってハートはチェコの国木であるスラヴ菩提樹の葉の形ですが、サラの可憐な表情とも呼応して、作品の雰囲気を愛らしく纏め上げています。
「遠国の姫君 La Princesse Lointaine」は1895年エドモン・ロスタンがサラのために書き下ろした戯曲。
ロスタンはその後「シラノ・ド・ベルジュラック」が大成功を収め、アカデミー・フランセーズの会員となります。
余談ですが、エドモンの次男、ジャン・ロスタンは生物学者になり、藤田嗣治が肖像画を描いています。
ルフェーヴル・ユティル社は“LU リュ”の愛称で親しまれてきたフランスのビスケット・メーカー。
ジャン・ロマン・ルフェーヴル(1819-1883) とポリーヌ・イザベル・ユティル(生年不明-1920)の二人が1846年にフランスのナントで創業し、 二人の名前を合わせて社名にしました。
後に二人は結婚、息子のルイ(1858-1940))の代からはルフェーヴル=ユティルという姓となっています。
広告の力をよく理解していたルイはミュシャやブィッセ(1859-1925) などの第一級のグラフィックデザイナーを起用してLUを宣伝しました。
ミュシャ「L.U.ビスケット:ナポリ」 | ミュシャ「L.U.ビスケット:ローマ」 |
ミュシャ「L.U.ビスケット:ヴェニス」
1986年にルフェーヴル・ユティル社はダノン社に買収され、さらにダノンがクラフト社に吸収されたため社名はなくなりました。
けれども“LU”ブランドのビスケットは現在もフランスだけでなく世界各地で人気があります。
今月、ギャルリー・アルマナック吉祥寺では「ミュシャ展 ~世紀末のパリを描いたモラヴィアの巨星~」を好評開催中。
1895年から1905年の間、パリジャンが熱狂したミュシャ作品を多数ご覧いただける貴重な展覧会です。
上でご紹介したLU関連の作品の他にも、大型のポスターから、挿画本、ポストカードまで、100年以上前の当時のオリジナルのみをご紹介しております。
HPからのご購入も可能です。
ご不明な点などございましたら、お気軽にお問い合わせくださいませ。
(K・T)