限定150部!ポール・ゴーギャン「メニュー2点組」のご紹介

制作年:2007年
限定部数:150部
制作技法:ネオシルク
サイズ:(額付)39×55cm

こんにちは。
ブログをお読みいただきありがとうございます。

台風後、秋晴れの高い空が続きとても爽やかですね。
さて今回は、後期印象派異色の画家として知られるポール・ゴーギャンが残した稀少な作品「メニュー」をご紹介いたします。

ゴーギャンが生まれたのは1848年のパリ。
しかし、当時のパリは王政から共和制へ移行した動乱期のさなかにありました。
一家はそうした不安定な状況のフランスを逃れ、南米へ移住。ペルーで幼少期を過ごします。

その後フランスへ戻り、証券会社社員として妻子を養う普通の生活をしていたゴーギャンに転機が訪れたのは35歳。
株の大暴落を機に絶対的な安定生活などないと感じ、それまで趣味で描いていた画業に専念する決意をしたのです。

最初は当時流行の印象主義の影響を受けていたゴーギャンですが、ピサロやセザンヌ、ドガなど多くの画家たちとの交友を重ね研究する中で、筆触分割を用いる印象主義に異議を唱え始めます。
ゴーギャンは細かい筆致で輪郭を曖昧にする印象派の手法とは対照的に、「太い輪郭線」で対象を「平面的」に捉える総合主義という独自の描写理論を提唱。

この斬新な手法は、ボナール、セリュジェ、ドニらナビ派の画家たちに大きな影響を与えました。
その後、ゴッホに誘われ南仏アルルでの共同生活を試みますが、強い個性を持つ二人には衝突が絶えず、ゴーギャンはわずか2カ月でアルルを後にします。

ゴーギャン「タヒチの女」(1891年)

そして西洋の物質文明に疲れ絶望したゴーギャンが辿り着いたのは、原始的な暮らしや風景が残る南国のタヒチでした。
経済的に決して豊かとはいえないこの地で、質素にそして静かに生活を営む人々を愛したゴーギャン。


「本当の豊かさとは何か」
貧困や病気に苦しみながらもタヒチでの生活にこだわり、精神性の高い作品をこの地で生み続けたゴーギャンは、そう問い続けていたのかもしれません。

さて、今回ご紹介する作品「メニュー」は、そうした一般的に知られるゴーギャン作品のイメージとは大きく異なり、ゴーギャンが気の知れた友人たちとタヒチで時折開催した晩餐会用に描かれたもの。
前菜からデザートまで盛りだくさんの料理コースに、可愛らしい挿絵が添えられています。

ロベール・レイが出版した「メニュー11点」

当時、ゴーギャンはこの即興挿絵付きメニューを11点制作。
1950年には美術評論家のロベール・レイが全11点のメニューをポショワールやフォトグラヴュールの技法により完全復刻。
限定450部で出版しました。(↑)


今回ご紹介する木額に入った作品は、さらにその11点のメニューの中から数点を選び、弊社がプロデュースして2007年に限定150部で復刻した作品です。
紙の質感やサイズを含めてより原画に忠実に仕上げました。
こちら左ページに描かれているのは二人の警官と一羽の鳥。

「どこを歩いてもいいが、悪さだけはするなよ」と警官が鳥に話しかける様子がユーモラスですね。
太った警官の後ろに立つひげを生やした警官は・・・ゴーギャン本人にも見えるような気がします。

また、右ページの題材はイソップ物語の寓話「キツネとカラス」。
カラスがくわえているのは料理にも出てくる大きなチーズ。チーズが欲しいキツネはこう囁きます。
何とも美しく立派なカラスさんでしょう。鳥の王様はあなた以外にはなれません。きっと歌声も素晴らしいことでしょうね。是非ともその美声をお聞かせいただけませんか?」
すると、カラスは思わず「カー」と口を開いてしまいます。チーズは下に真っ逆さま。
まんまとチーズを手にしたキツネはカラスに痛烈な皮肉を残します。
「やれやれ、頭さえよければ鳥の王様になれたでしょうに。」

何ともずる賢いキツネのお話ですが、ゴーギャンの描くキツネにはどこか愛嬌があって思わず笑ってしまいます。
シンプルでモダンな木製のフレームでお部屋のインテリアにも合わせやすいと、大変人気の作品です。
作品ページはこちら

 

 

さて、今月の展示特集ではゴーギャンがタヒチでの思い出を綴った随想集『ノアノア(芳しき香りの意)』(1947年復刻版)もご覧いただけます。
色鮮やかな水彩画の図版も多数収録された本書は、地上の楽園タヒチに魅せられたゴーギャンの情熱が余すところなく伝わる力作です。
また、1950年版の『メニュー』もお取り扱しております。
ご質問などございましたらお気軽にお問い合わせください。

(R・K)