4月「ラウル・デュフィ展」が始まりました

お待たせいたしました。
今月の企画展「ラウル・デュフィ展」が先週末より開催いたしました。
デュフィの初期作品から、名実ともにフランスを代表する芸術家となる晩年までを網羅したおよそ50点を出品。

華やかで、軽やかで、歌うようで・・・色彩豊かなデュフィ芸術を表現する美しい形容詞は枚挙にいとまがありません。
それでは、出品作品の一部を初期作品からご紹介しましょう。

「漁・LA PECHE」 1910年 木版

デュフィが1907年から11年という4年間のみ制作に傾倒した木版画は、
後年ファッション界で名を馳せる契機となった、
いわば運命的なものであることをご存知ですか?
ファッション・デザイナーのポール・ポワレは、
自身が用いる個人便箋のヘッド部分のデザインをデュフィに依頼。
木版ならではの力強い線で彫られた瀟洒なレターヘッドはポワレの関心を強く引き、
以降ファッション・テキスタイルの分野におけるデュフィの創作活動が始まりました。
本作「漁・LA PECHE」は、ちょうどこの頃に手がけた木版作品。
当時、強い影響を受けていたセザンヌの線や構築的な空間表現を意識しているのでしょうか。

※出品作品ではありません

 

この他、詩人ギョーム・アポリネールと共同制作した「動物詩集」も生き生きとした彫刻線の太さと、黒白の対比が魅力のこの頃の作品。若きデュフィの秘めたる可能性がひしひしと伝わります。 

「小花のブーケ」 1930年頃 水彩 「ナデシコのボール」 1930年 水彩

さて、ポワレからの依頼がもとでファッション界にデビューしたデュフィ。
当時、一流クチュリエに上質な生地を卸していた織物会社ビアンキーニ・フェリエ社と専属契約を結び、イマジネーションと抜群の美的センスを駆使し次々と斬新なテキスタイルデザインを発表しました。こちらの2点はデュフィ肉筆のテキスタイル画。
アネモネやバラを主題にしたデザインが多い中、ヒヤシンスを描いた右作品は稀少なモチーフです。

当時のファッション事情をもっと知りたい方はこちらをどうぞ。
>ファッション・ジャーナリスムの歴史<前編>
>ファッション・ジャーナリスムの歴史<後編>

デュフィの描くリズミカルで観るものに喜びを与える明るい画風は
象徴派詩人ステファヌ・マラルメとのこんなコラボレーションも生み出しました。

「マドリガル」

出版年:1920年  制作部数:1110部  技法:リトグラフ、ポショワール
出版元:ラ・シレーヌ出版(パリ)
「マドリガル」とは14世紀頃にイタリアで広まった二声以上の世俗音楽のこと。言葉のアクセントを生かし、恋愛や日常生活の出来事を主題としたマラルメの詩25篇にデュフィの挿絵が彩られた挿画本。
ジャン・コクトーにより編纂され、初版は1920年にフランス・パリの出版社が刊行。
その後、1960年に色鮮やかなデュフィデザインのテキスタイルがあしらわれた復刻版が出版されました。

弊社は、オリジナル版と復刻版両方をお取り扱いしておりますが、今月の展示ではオリジナル版を出品しております。

「マドリガル」についてもっと知りたい方はこちらをどうぞ。
>デュフィ版画集「マドリガル」「コクトーによるデュフィ」「画家への手紙」のご紹介」

「青い椅子と扇」 「バラの花束を持つ婦人」 「一輪のピンクのバラ」

その他、「植物誌」やファッション雑誌「ガゼット・デュ・ボン・トン」「モン・ドクトル・ル・ヴァン」など
稀少なデュフィ作品が一堂にご覧いただける贅沢な展覧会!
会期中の皆様のお越しを心よりお待ちしております。

(R・K)