【企画展 吉祥寺】ラウル・デュフィ展  光り輝く色彩「電気の精」(2019年4月)

2019年4月5日

企画展概要

ギャルリー・アルマナック吉祥寺 2019/4/2(火)~5/6(月・祝) open 11:00~19:00 無休

 

「電気の精」の展示風景。さながらパリ万博「電気館」のような迫力です!

 

進歩と近代性のシンボルとしての‟光”を描いたラウル・デュフィ

第一次世界大戦終了から約20年経った、1937年。
この年に開催されたパリ万博は、次第に勢力を拡大するナチス・ドイツの台頭のもと、世界恐慌の煽りを受け不況にあえぐフランスの「再建」を掲げた国家プロジェクトでした。

テーマは、《近代生活の諸芸術と技術の博覧会》。

お腹を空かせた失業者のための‟大規模土木事業”を命題とする主催者側にとって、絵画が果たす役割は、せいぜい建築物の装飾、といったところでした。

エッフェル塔を挟んで左側がドイツ館、右側がロシア館。当時の政治的緊迫感そのままに、拮抗する二大外国勢力が向かい合う。(C)wikipedia
電気館はエッフェル塔からまっすぐ南に向かう、シャン・ド・マルス公園の最南端に建設された。万博の南入場門の役割も果たす。(C)wikipedia
現在のパリ市との比較。電気館のあった場所には「平和の壁」が造られている。(C) Google

それでも、フランス代表の「10人の画家」の一人として選抜されたラウル・デュフィにとって、“建築物を装飾する”壁画制作は希望に叶う仕事でした。
建築と芸術の統合ともいえる‟壁画”は、デュフィの目指す「造形芸術を日常生活に組み込む」理想そのものだったのです。
また、個人ではなく国家からの注文なので、望みうる限り最大の規模、最高の場での実現となりました。

デュフィが担当したのは、‟電気館(le Pavillon de la lumière)”。
進歩と近代性のシンボル‟光”をメインテーマとし、電気の栄光を湛える壁画制作を依頼されました。
それからデュフィは1年かけて電気の歴史を学び、電気の物理的・科学的事象を学び、古代の科学者たちの文献まで紐解きました。
最終的な筆入れに至るまでに何度も習作を繰り返し、壁画の土台となる木部を研究し、アトリエと展示会場の湿度の違いを計算して、巨大壁画を描くに適した塗料の開発を行いました。
文字通り科学技術の粋を集めて、連作壁画「電気の精」を完成させたのです。
その姿はまさに、困難を乗り越え歴史的傑作壁画の制作を成し遂げた偉大なルネサンスの画家そのものでした。

(C)MEGE/Jean Jacques Le Moellic / Jean Michel Berthod

”電気館”では、高さ10メートル、全長60メートルの色鮮やかな巨大壁画が、技師サロモンの照明プロジェクターで幻想的に光り輝き、文字通り「光の宮殿(Pavillon de la Lumière)」と称されました。
人々は偉大な壁画作品を一目見ようと、行列をなしたのです。 

(C)Musee d’Art Moderne de la ville de Paris

現在、パリ市立近代美術館に収蔵されている「電気の精」は、暗闇に色彩が光を放つような当時のままの幻想的手法で展示され、その圧倒的な美しさで世界中から訪れる人々を魅了し続けています。

ムルロ工房の名刷り師ソルリエとともに
10分の1スケールで実現させた「電気の精」の連作リトグラフ

パリ万博から十数年後の1953年。
ナチスが去り、第二次大戦終結から約10年が経った頃。

シャガール、マティス、ピカソといった、今世紀の最も偉大な芸術家が数多くの傑作を生み出したパリの伝説的版画工房・ムルロ工房は、1953年に創立40周年を迎えようとしていました。
その記念作品として、デュフィの代表作「電気の精」をリトグラフとして制作することに挑んだのです。
連作リトグラフ「電気の精」は、デュフィの最晩年、ムルロ工房の初代刷り師シャルル・ソルリエの手によって、デュフィとの共同作業によって制作されました。

この大作を10分の1の縮小版として制作するためには数年の歳月がかかり、完成をみた1953年の3月23日にデュフィはこの世を去りました。
そのため、全ての作品に自筆のサインを入れることが出来ぬまま、その2ヵ月後、「電気の精」はムルロ工房により、デュフィの遺作として発表されることになりました。

日本では現在、大学などの公共教育機関の他、ホテル、企業などに僅かな部数が収蔵されています。


デュフィが遺した‟光”の連作を、ギャルリー・アルマナック吉祥寺にて一堂に展覧

百貨店での展示風景。

平成から令和へと新たな元号に代わる2019年初春、ギャルリー・アルマナック吉祥寺では、新時代の幕開けに相応しい連作リトグラフ「電気の精」を全10点すべて展覧。
パリ万博の‟電気館”さながら、ギャラリー全体が「電気の精」と一体化します。
また、電気の精のための習作として描かれた貴重な素描2点や、挿絵版画、稀少オリジナル版画など、約50点を出品予定。

どんなに暗い時代でも希望の光を忘れず、生きる歓びを描き続けたラウル・デュフィ。
その絵画世界を、ぜひこの機会にご堪能ください。

会期は、4月2日から5月6日(月・祝)まで。
皆様のお越しを心よりお待ちしております。

※ 作品は東京・吉祥寺のギャルリー・アルマナック(11:00~19:00 会期中無休)でご覧いただけます。稀に作品が店舗にない場合もございますので、確実にご覧になりたい場合はご来店の2営業日前までにご連絡くださいませ。

※ 経年により、作品の付帯品(額や専用箱、アクリルなど)に若干の傷み、修復痕がある場合があります。予めご了承くださいませ。



展示風景



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お問い合わせ
・TEL 0422-27-1915 (ギャルリー・アルマナック 吉祥寺)

ギャルリー・アルマナック 吉祥寺
営業時間:11:00~19:00 会期中無休
住  所:東京都武蔵野市吉祥寺本町2-18-15 アクセス