【9月企画展開催予告】吉祥寺「シャガール展」、軽井沢「イカールとベル・エポックのパリ展」

シャガール「天使の湾」 イカール「シンフォニーインホワイト」

こんにちは。ブログをお読みいただきありがとうございます。

台風の影響から大荒れのお天気が続く日本列島ですが、
行楽シーズンを迎えた全国各地の娯楽施設や観光地では大人から子どもまで一緒に楽しめるイベントが目白押しですね。

東京都美術館で開催中の「ポンピドゥー・センター傑作展」も今夏のお出かけスポットの一つ。
編年方式による分かりやすい展示構成と、彫刻や写真、映像、立体オブジェなどが並ぶユニークな出品作品の数々。
先日鑑賞した際にも、老若男女様々な人が集いにぎわっていました。

1920年頃のシャガール

 
その「ポンピドゥー・センター傑作展」における、見どころの芸術家の一人がマルク・シャガール。
夢想的な画風で知られるシャガールですが、今回展示されている「ワイングラスを掲げる二人の肖像」は
まだそうした自身の作風が確立する前、1917年当時30歳のシャガールによるどこか初々しい作品。
新鋭のロシア出身画家としてパリで認識されてきたころでしょうか。

「ワイングラスを掲げる二人の肖像」

しかし、シャガールはこの作品制作より3年前。
第一次世界大戦の勃発により訪問中のベルリンからパリへ戻れず、さらに母国ではロシア革命が蜂起。 

故郷で帰りを待っていた最愛の女性ベラとはようやく結婚生活を始めていたものの、先の見えぬ地理的・精神的不安定さのなかで、絵筆を握っていたのかもしれません。

後年の作品では影を潜めるグラフィカルな要素が見られる本作。
シュプレマティスムと呼ばれる抽象表現を推し進めたマレーヴィッチら親交のあった祖国ロシアの若手芸術家たちに影響を受けたのでしょう。
キュビスムや未来派など新しい時代の芸術運動に感化され、自身の創作活動もまだ模索を続けていたようですね。

制作年代や時代背景を理解すると、芸術鑑賞がぐっと面白くなることを再発見できた美術展でした。

さて、ギャルリー・アルマナック吉祥寺の9月企画展では、
20世紀美術史をたどる上で欠かせないこの偉大なる芸術家マルク・シャガールを大特集。
シャガールが生前制作した希少な版画30点ほどを出品いたします。

石版画の魅力にとりつかれたシャガールは、当代随一の版画工房ムルロ工房の名刷師シャルル・ソルリエとともに腐心し、
色版を重ねることで現れる色彩にあふれた詩的なリトグラフを次々と創作。
1922年に版画の制作を開始してから1986年に亡くなるまで60年以上におよび、生涯に1050点ものリトグラフを残しました。
これは同時代の他画家と比べて圧倒的に多く、彼の版画に対する高い情熱がうかがえます。

版画でしか出せない唯一無二の表現力を武器に、複製芸術である版画の芸術的な価値を高めることに大いに貢献したシャガール。
秋の気配を少しづつ感じる9月は、シャガールが奏でる豊かな色彩と愛の調べを堪能しにいらしてみてはいかがですか。
会期予定:9/1(木)~9/30(金)

シャガール「バッカス神の物語と神殿」

 
また、アトリエ・ブランカ軽井沢では来月、「イカールとベル・エポックのパリ展」を開催予定です。

19世紀末から20世紀初頭のヨーロッパ。
それは国家の為政者から貧しい労働者まで、誰しもが波瀾万丈な人生を送った激動の時代。

特にフランス・パリでは、産業革命の発展により富裕市民層が誕生、急激な都市化が進み、娯楽施設が繁栄。
また近代文明の発展を象徴する万国博覧会が次々に開催されるなど晴れ晴れしい一面の裏で、
帝国主義を推し進める列強が海外諸国を次々と植民地化し、近隣諸国との緊張がゆっくりと、しかし確実に増幅していきます。

キャバレー「ムーラン・ルージュ」 1900年のパリ万博 植民地化したインドに駐留する英軍

国家間の様々な思惑が交錯する中でついに、1914年に火花を切った第一次世界大戦。
5年間に及ぶ混乱と混沌の中で人々は、まだ戦争の足音も聞こえぬ1900年前後の華やかかりし活気に溢れた都市生活を偲び、
それを「ベル・エポック(良き時代、の意)」と呼んで懐古しました。

今回の企画展では、そうしたベル・エポックの時代に誕生したロートレックやスタンランの作品から
第一次世界大戦を経て生まれた芸術運動、アール・デコを代表するルイ・イカールの作品を特集。

懸命に毎日を生き抜きながら、自らの足跡を残そうと歩み続けた芸術家たち。
波乱に満ちた端境期に生きた彼らが焦がれ、懐かしみ、惜しみ、そして再び謳歌したパリの魅力を存分にお楽しみくださいませ。
会期予定:9/2(金)~9/30(金)

吉祥寺「マルク・シャガール版画展」と、軽井沢「イカールとベル・エポックのパリ展」、
両展への皆様のお越しを心よりお待ちしております。

スタンラン「ヴァンジャンヌの殺菌牛乳」 イカール「ミミ・パンソン」