ヴェルヴ7号「ベリー公のいとも豪華なる時禱書」のご紹介

 

こんにちは。
ブログをお読みいただきありがとうございます。

美術史上、最も華麗な装飾写本と言われる書籍を皆様ご存知ですか?
本の名は「ベリー公のいとも豪華なる時禱書」。
世界史の教科書などにも登場する有名な作品です。

注文主は、15世紀フランス中部のベリーを所領したベリー公ジャン1世(1340-1416)。
画家のランブール兄弟に命じてて、類い稀なる美しさの時禱書(キリスト教徒の聖務日課書)を制作させました。
原書は、フランスにあるシャンティイ城内のコンデ美術館が収蔵していますが一般公開はされていない大変稀少な歴史的資料です。

しかし、その美しさゆえ多くの人々がその魅力に取りつかれてきたようです。
20世紀、美術関係の書籍を積極的に出版したことで知られるテリアードも、この「ベリー公のいとも豪華なる時禱書」に魅了された一人。
彼は、知己のあったマティスやシャガール、ピカソら20世紀前半に活躍していた芸術家の作品をより広く広めようと創刊した美術文芸誌「ヴェルヴ」において、毎号、高品質のリトグラフ作品を解説とともに収録しました。
(「ヴェルヴ」について詳しくはこちら

 

「ヴェルヴ」第7号(1940年出版)

 

そのテリアード氏が、20世紀の芸術作品とともに普及に情熱を傾けたのが中世の美しい彩色写本。
ヴェルヴの7号目では「ベリー公のいとも豪華なる時禱書」を、エリオグラヴュールという写真製版を併用した銅版画技術により忠実に再現しました。


では、そもそも写本とは何でしょうか。
写本とは、手書きで筆写された本や文書のこと。
活版印刷が発明される以前は、書物は基本的にこの方法により複製され、特に中世キリスト教世界では、日々の聖務の一つとして修道士たちが写本製作に励みました。

次第に、文字だけでなく優美な装飾画も施されるようになった彩色写本は、美しい芸術品として王侯貴族の目に留まるようになります。
ベリー公ジャン1世も写本を熱心に蒐集した一人として知られ、ついに自ら時禱書の制作を命じた、というわけです。

<中世に制作された写本例>

「ケルズの書」(8世紀後半頃) フランスで制作された時禱書(1410年頃)

この「ベリー公のいとも豪華なる時禱書」には、他の写本と異なるいくつかの特徴があります。
まず、1月から12月までの暦の構成になっていること。
宮中で行われる新年の宴の様子を描いた1月から始まり、農民たちの素朴な生活など丁寧に描かれ、当時の風俗を知る上でも非常に興味深い資料。

 

また、半円形の上部に見えるのが各月に対応した星座。
深みのある天空の描写には、当時稀少な顔料であったラピスラズリ(瑠璃)が用いられ、画面を覆う鮮やかな群青色に目を奪われます。
この時禱書は、ベリー公ジャン1世とランブール兄弟の相次ぐペストでの死去により一時制作が中断され、後に別の画家が完成したと言われています。


 

 

当店ではこのヴェルヴ7号で復刻された、「ベリー公のいとも豪華なる時禱書」をお取り扱い。
美しい中世の歴史と美術に浸れる稀少な美術品です。
ご質問などございましたらお気軽にお電話(0422-27-1915)でお問い合わせくださいませ。

(R・K)