技法解説 - 絵画油彩≫油彩画／油絵（ oil painting ＜英＞）油彩は、油絵とも呼ばれる絵画技法の一つで、油性の顔料を用いて描かれる絵画のことです。主にキャンバスや木板などの表面に、絵具を混ぜて描かれます。油性の絵具は乾燥が遅く、重ね塗りや色の混合が容易であり、緻密な描写や豊かな色彩表現が可能です。油絵はルネサンス期に隆盛し、宮廷画家による緻密な肖像画や風景画、風俗画が全盛期を迎え、以降ヨーロッパ絵画の主流となりました。油彩画の最高傑作として、ルネサンス期の巨匠レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」や、バロック期の画家レンブラントの「夜警」、バルビゾン派の巨匠ミレーによる「落穂拾い」などが挙げられます。
≫フレスコ画（ fresco ＜英＞） フレスコ画は、湿った石灰漆喰の壁に天然の顔料を塗り込む壁画技法です。顔料が乾くと、壁と一体化し、耐久性が高くなります。古代から使われていましたが、特に中世とルネサンス期に隆盛しました。その代表作の一つに、イタリアのルネサンス期に活躍したミケランジェロのシスティーナ礼拝堂の天井画があります。その壮大なスケールと驚異的な技術で、宗教的な物語が描かれています。また、古代ローマのポンペイ遺跡から発見された「ポンペイの壁画」もフレスコ画の傑作です。これらの作品はフレスコ画の芸術性と技術の進化を示しています。
≫テンペラ画（ tempera ＜伊＞） テンペラ画は、中世からルネサンス期にかけて主に使用された絵画技法の一つです。この技法では、顔料を卵黄や卵白などの卵と水で混ぜ、木製の板や布地に描かれます。その後、顔料が乾くと卵の膜が硬化し、絵画が固定されます。テンペラ画は鮮やかな色彩と細密な描写が特徴であり、宗教画や肖像画など様々なジャンルで用いられました。テンペラ画の代表作としては、1310〜1311年頃にジョットが制作した『荘厳の聖母』や、1485年頃にボッティチェリが描いた『ヴィーナスの誕生』が挙げられます。
日本画≫水墨画水墨画は、中国や日本など東アジアの伝統的な絵画技法で、水と墨（墨汁）を用いて描かれます。風景や花鳥、人物などを描写し、独特の繊細さや抽象性が特徴とされます。墨と水の濃淡や筆の使い方で表現し、線や色彩よりも筆のタッチや墨の濃淡に重点が置かれます。美しさや深さから芸術だけでなく精神修養や禅の哲学と結びつき、東アジアの文化圏で広く愛されています。
≫色彩画 日本画の色彩画は、日本の伝統的な絵画技法で、豊かな色彩を重視した作品です。通常、墨を主体とする水墨画と異なり、絵具を用いて鮮やかな色彩を表現します。花鳥や風景、人物などのモチーフを通じて、明るく豊かな色調が特徴です。伝統的な技法として淡彩や蒔絵などがありますが、現代の画家たちは独自の色彩表現を追求し、さまざまな技法や素材を組み合わせて新しい色彩画を創作しています。
≫浮世絵 浮世絵は、江戸時代に日本で発展した木版画の一形態です。主に市井の風俗や歌舞伎、美しい風景などを描き、大衆文化の一環として広く親しまれました。鮮やかな色彩と独特の筆致で知られ、当時の日本社会の様々な側面を表現した浮世絵は、１９世紀フランスで『ジャポニスム（日本様式）』として大流行し、ヨーロッパの芸術文化に多大な影響を及ぼしました。有名な浮世絵師には、歌川広重や葛飾北斎などがいます。
水彩≫水彩画（ watercolor ＜英＞）水彩画は、水と顔料を使って描かれる絵画の一種で、油彩画と同様に最も一般的に知られる絵画技法です。透明水彩と不透明水彩に分かれ、透明水彩は水で薄めた顔料を紙に塗ることで透明感や淡い色合いを表現し、不透明水彩は白や他の不透明な色を混ぜて使い、より鮮やかな色彩や厚みのある表現を可能としています。
≫グワッシュ／ガッシュ（ gouache ＜英＞） グワッシュ（不透明水彩絵具〉は顔料とアラビアゴムのメディウムで作られています。透明水彩絵具に比べ顔料分が多いため、塗り重ねによって下の色を覆いかくすような色面の表現ができます。 また、退色の少ない優れた顔料を多く使用しているため、色の持つ美しさがそのまま画面に表現されます。西洋中世から18世紀にかけて彩飾写本や細密画に使用され、デューラーの風景画や習作が傑作として知られています。20世紀以降は主に商業用のポスターやイラストなどで広く使用されています。
パステル≫パステル（ pastel ＜英＞）パステル画はパステルと呼ばれる粉状または棒状の着色材料を用いて描かれる絵画の一種です。柔らかくぼかされた色彩と質感が特徴で、指や専用のツールを使って色を塗り重ね、混合し、ぼかします。この技法は印象派やポスト印象派の画家たちに好まれ、ルドンやドガらが傑作を残しています。
素描≫素描（ drawing ＜英＞／ dessin＜仏＞）素描は、線や影を使って人物や風景を描く芸術表現であり、チョーク、鉛筆などが用いられます。絵画や彫刻の基礎となり、近代では素描そのものも独立した芸術と見做されています。マチスやピカソら、近代絵画の巨匠による独自のスタイルが人気を博し、20世紀以降、素描に対する価値観が劇的に高まりました。
その他≫切り絵（ collage ＜英＞）切り絵は、紙を切って図柄を作る伝統的な工芸技法です。鋭い刃物を使い、紙を細かく切り抜くことで繊細な模様や立体感を表現します。歴史は古く、日本では平安時代から存在し、祝祭や装飾品として使用されてきました。欧米ではフランスの巨匠アンリ・マティスが晩年に発表した一連の切り絵作品が傑作として広く世に知られています。
≫版画（ print ＜英＞／ estampe ＜仏＞） 版画とは、木版画、銅版画、リトグラフ、シルクスクリーンなどのいくつかの異なる技術を使用して、複製可能な芸術作品を作成するための技法やプロセスを指します。版画は一般的に、原画を版に転写し、それを版から印刷することで複製されます。異なる種類の版画には、それぞれ特有の特徴があります。 →技法解説 - 版画 |
J=F・シェニョー「羊番の少女と犬」（部分）1880年頃
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