技法解説 - 版画銅版画≫エングレーヴィング（ engraving ＜英＞）最も古い銅版画技法で、菱形の断面をもつ鑿（のみ・ビュラン）で銅板に線刻する。線の両側にできるまくれは除去され、規則的で鋭く硬い線となる。
≫ドライポイント（ dry point ＜英＞） 硬質の金属ニードルを用い、銅板上に直接描刻する方法。柔らかい曲線や、力強い直線など幅広い線描の表現が可能である。まくれによるにじみが特徴。
≫エッチング（ etching ＜英＞） 銅板面に防蝕層（グラウンド）を施し、描刻後、版を腐蝕液で腐蝕させると、描刻した部分のみが腐蝕され凹版が出来る。腐蝕の度合いによって、線の濃淡を調整することが可能。
≫アクアチント（ aquatint ＜英＞） 銅板の全面に松脂（まつやに）の粉末をまいて熱し固着させた後、描画部以外をワニスで覆い、酸に浸すことで、面的な明暗諧調を得ることができる。エッチングと併用することが多い。
≫エリオグラヴュール（ héliogravure ＜仏＞）フォトグラヴュール（ photogravure ＜英＞） アクアチントから発展した写真製版銅板画。感光剤の塗られた銅板に焼付けを施し、それを腐蝕 液に浸し、感光部分を腐蝕させることで版を作る。原画のハーフトーンを美しく再現できる反面描画の強弱が弱いため、主に手作業によるエッチングを併用することで完成度を高めている。
≫メゾチント（ messotint ＜英＞）マニエール・ノワール（ manière noire＜仏＞） 凹版。版の表面全体に線または点刻により傷を付け、凹版の下地を作る。この段階でインクを載せ印刷すると漆黒に近い画面が出来上がる。明るい部分や面を作るにはスクレーバー（彫刀）を使い、版面のささくれを削り凹凸をなくすことで表現する。代表的な作家は浜口陽三、長谷川潔などである。
石版画≫リトグラフ（ lithography ＜英＞）原板となる石灰石等に油性のクレヨンなどで描画した後、化学溶液を塗布し、描画部分は油性、その他の部分は保水性を持たせる。上から油性のインクを付着させ、描画部分のインクを押しあてた紙に吸い取り一色を完成させる。多色刷りの場合は各色ごとに版を制作し、重ね刷りする。
≫フォトリトグラフ（ photolithography ＜英＞） 写真製版石版画。石板もしくは亜鉛板等に感光剤を塗り、フィルムに写された画像を焼付けて製版する。紙への印刷は通常のリトグラフと同様の技法が用いられる。
ガラス版画≫クリシェ・ヴェール（ cliché-verre ＜仏＞）ガラスに黒色ゼラチンを塗り、その膜をニードルで削って図柄を描き、原版に印画紙を重ねて感光させる版画技法。描いた線の部分のみが光を通す仕組み。版画でありながらインクを使わない点が特徴で、線描は柔らかく、微妙な明暗の諧調の表現が可能。コロー、ミレーなどが好んだ技法。
≫コロタイプ（ collotype ＜英＞） 最も初期の写真製版法。ガラス板上に感光剤をまぜたゼラチンを塗布し、各色ごとに焼付けを施し、多色刷り版を作る。版の耐刷力は弱いため、大量印刷は出来ない。繊細な色調が特徴。
木版画≫板目木版日本では最も一般的な木版技法で、木の幹を縦に切り、木目が水平に出るように挽いた木の板を彫って版木とする。浮世絵や棟方志功の作品が代表的なもので、多色刷りも可能である。
≫木口木版 堅い木の幹を輪切りにして、その中心部のより堅い部分のみを寄せ木のように集め合わせて版木を作る。素材が堅牢なので、より細い線描を表現することが可能となる。多色刷りの作品を制作する場合は色ごとの版をそれぞれ作り、重ね刷りすることで完成させる。
孔版画≫シルクスクリーン（ silkscreen ＜英＞）枠に張った絹やナイロンなどのフィルムに感光剤を塗布し、そこに図版を謄写する。感光した部分は水で洗い流すと、絹の目が露出しインクを透過する。版画紙の上に版をのせ、スキージーでインクを均等に押し当てると下の紙に絵が写し取られ一色が完成する。多色刷りの場合は、部分ごとにこの工程を繰り返し、完成させる。アンディ・ウォーホルや横尾忠則などが有名である。
≫ポショワール（ pochoir ＜仏＞） シルクスクリーンと同様の一色一色の型付板を作り、それを用紙にあてがい、型板の上から刷毛で色を摺り込んでゆく手仕事印刷。ユトリロ「霊感の村」、マティス「ジャズ」、デュフィ「植物誌」などが代表例。
デジタル版画（ジークレー）≫ジークレー（ giclée ＜仏＞）最新のデジタル技術とスキャナー技法を駆使して制作される新版画技法。ジークレー専用の大型特殊インクジェットプリンタから15ミクロン以下のシアン、マジェンタ、イエロー、ブラックとそれぞれの中間色を合わせた10色のインクを用い、数十億粒以上のインク粒子を吹きつけ、画像を再現する。色の再現度が高く、堅牢であるため、気鋭の作家たちが多く利用している。
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ラウル・デュフィ「フランスの春 パリ」1958年頃
J=F・ミレー「母親の心づかい」1862年
藤田嗣治「アメストリス」1930年
フェリックス・ヴァロットン「動揺」1898年
藤田嗣治「バガボンド」1960年
熊谷守一「扶桑」1977年以降（没後）
モーリス・ユトリロ「サン・リュスティック通り」1950年
エドゥアール・マネ「すみれの花束をつけたベルト・モリゾ」
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