ルーヴル・カルコグラフィー 知と美の世界

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Benh LIEU SONG (Flickr), CC BY-SA 3.0 , via Wikimedia Commons

100年ぶりのパリ・オリンピック、盛り上がりましたね!
パリの名所とヴェルサイユ宮殿をめぐるマラソンコースは見どころが満載でした。
選手たちはあっという間にガラスのピラミッドの前を駆け抜けていきましたが、ルーヴル美術館はパリを訪れた観光客が最も時間をかける場所と言われます。

今回は皆さんにこのルーヴル美術館に属するカルコグラフィー室をご紹介いたします。

ギリシャ語で「銅(カルコ)に描かれたもの」という意味のカルコグラフィー。
14世紀に用いられていた木版画の技術は15世紀に銅版画へと受け継がれ、さらに発展していく中で、デューラーやレンブラントを筆頭とした“Le peintre-graveur(画家-版画家)”による創作版画が生み出されました。

一方、写真が発明される以前は、複製メディアとしての役割のほぼすべてを版画が担ってきました。
歴史的記録として建築物の外観や設計図、あるいは科学書における挿図。
また、卓越した技術を持つ版画家が巨匠たちの芸術作品を模刻したもの。
版画が長い間きわめて重要なメディアであったことは言うまでもありません。

イスラエル・シルヴェストル「ヴェルサイユ宮殿 前庭からの眺め」1682年 エッチング 38×50cm


 

カルコグラフィー室は、ルイ14世がフランス王家の絶大な権力を知らしめるために、王家所蔵の芸術品や催し事などを銅版画で残すことを奨励したことから始まりました。
歴代王家や王立アカデミーのコレクション、さらにルーヴル美術館の名画を版画にするという任務を与えられ、また現代作家の新作も取り入れつづけているとのこと。
その蒐集数は14,000を超えるとされます。

ルーヴルを訪れた方は、ミュージアムショップの一角に版画を販売しているブティックがあったのを覚えていらっしゃるのではないでしょうか?
販売されている版画は当時の原版から一枚一枚刷られており、ルーヴル・カルコグラフィーのエンボス印が押されています。

その中には藤田嗣治、長谷川潔といったフランスで活躍した日本人の“Le peintre-graveur(画家-版画家)”作品も。

ルーヴルは、作者の死後十年経ってからでないとその作品を陳列せぬことになっています。但しエッチングは例外となって居り、十五世紀から現代迄の銅版の原版を所持して居ります。私の銅版も二枚ほど(自画像と、イタリアのモデルジャクリンの横顔とです。)がはいっています。何せよルーヴルに自分の絵がはいったということは、作家として何よりの誇り何よりの喜びでしょう。(中略)セエヌ河畔を散歩してこのルーヴル宮殿の壮麗な建物を仰ぎ見る時に、このなかにじぶんの画が壁にかけられ永久にそこを飾っていると思う時は、画家としてこれより大きな喜びはないと私は体験しました。

藤田嗣治『巴里の昼と夜』1948年 世界の日本社発行 79頁


目下、八王子市夢美術館では「ルーヴル美術館の銅版画展」を開催中(2024/06/28~2024/09/01)です。
ルーヴルやヴェルサイユ宮殿を記録したものから、ルネサンス期からの名画の複製、現代作家のオリジナル版画までの130点をじっくりと鑑賞できます。

数百年に及ぶ版画史を一望できるこの機会をお見逃しなく。


(K・T)