ルネ・ラリック 噴水の女神たち

こんにちは。
暑い日々、ほんの少しでも涼を感じていただけたらと願い、ルネ・ラリックの噴水をご紹介します。

ジュエリーデザイナー、そしてガラス工芸家の巨匠ラリックが1925年にパリで開催された<アール・デコ博覧会>で発表したガラスの噴水≪フランスの源泉≫。

博覧会会場で最も注目を浴びたとされる、その高さはおよそ15m。
およそ50~70cmの女性像を八角塔の角に16体ずつ積み上げ、それぞれから水が放出される仕組み。
夜にはライトアップされたというその幻想的な光は想像を超える美しさだったに違いありません。

女性像は16種×8=全128体が設置されました。
名前のわかっているものは以下の通り。
ギリシャ神話に登場する女神やニンフ(精霊)の名が付けられています。

Calypso カリュプソー 70cm
巨神アトラスの娘。オデュッセウスを深く愛しますが、別れることとなります。

Clytie クリュティエ 70cm
太陽神アポロンと愛し合いますが、失恋し、絶えず太陽に顔を向けるひまわりへ化身したと言われます。

Daphné ダプネー 70cm
太陽神アポロンの求愛を断るため、月桂樹に姿を変えます。
アポロンはひどく悲しみますが、その枝から月桂冠を作り、身に着けました。

Ariane アリアドネー 63cm
クレタ王ミ―ノースの娘。英雄テセウスがミノタウロスの迷宮から脱出するのを助けます。

Doris ドーリス 63cm
海の大賢人ネーレウスと結婚し、50人の娘を生みました。

Thalia タレイア 59cm
三美神の一柱。(もしくは喜劇をつかさどる女神)

Echo エーコー 59cm
森のニンフ。ゼウスがヘラの監視から逃れるのを助けたため、ヘラの怒りを買い、話しかけた人の最後の言葉を繰り返すことしか許されなくなりました。

Climene クリュメネ― 55cm
海の女神のひとり。

Mélite メリテー 55cm
泉や川のニンフ。

Galatée ガラテイア 50cm
海神ネーレウスの娘のひとりで、一つ目巨人ポリュペーモスに愛された悲恋が有名です。

Calliope カリオペー 50cm
叙事詩を司る女神。ゼウスとムネモシュネの間に生まれた9人の娘たちのひとり。

Alia アリア 47cm
海神ポセイドンの愛人のひとり。

Telphuse テルフューズ 47cm
河神ラドンの娘。アルカディアの泉にその名が付けられました。

博覧会終了後、これらの女神たちは同じ型を用いて生産販売されました。
さまざまな邸宅に清流をもたらしたことでしょう。

≪フランスの源泉≫は現存しませんが、翌1926年に作られた噴水が日本にあることをご存知でしょうか?
高さ2.9mの≪シャンゼリゼ・ショッピング・アーケイドの噴水≫は、2020年に閉館した飛騨高山美術館で見ることが出来ました。
跡地に建設中のリゾートホテル敷地内に美術館も併設され、再び展示されるとのこと。(2024年開館予定)
ガレやドーム兄弟のガラス工芸のコレクションも引き継がれているそう。
ぜひ訪れたいスポットです!

ガラスの女神たちが祈りを捧げるように佇む、静謐な姿と流れる水のコラボレーション。
まさに心を洗われるような気がします。


アトリエ・ブランカ軽井沢店/吉祥寺店でも常時ルネ・ラリックのガラス作品をご紹介しております。
お取り扱い中のラリック作品はこちらよりご覧ください。

(K・T)