浜口陽三と南桂子

こんにちは。
ブログをお読みいただきありがとうございます。

2月2日よりスタートした「南桂子展 コト、コト。コトリ。」に行ってまいりました。
ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクションは水天宮前駅からすぐの立地。
小さくて居心地の良い美術館で、ゆっくりと鑑賞できます。

武蔵野市立吉祥寺美術館も浜口陽三と南桂子の作品を多数所蔵しています。
平成6年に浜口自身が武蔵野市に133点を寄贈。
その一部が「浜口陽三記念室」にて常時公開されています。(展示替えあり)


浜口陽三と南桂子の出会いは1950年頃。
最初の結婚で4人の子供に恵まれた南でしたが、芸術家の道を選び、パリへ戻った浜口を追いかけるように渡仏、以後約30年をふたりはパリで過ごしました。

現在のラ・クーポール
Wikipediaより

1953年12月、パリのモンパルナスに到着した浜口はその夜、ブラッスリー “ラ・クーポール” へ。
“ラ・クーポール” はピカソやフジタ、サルトルら有名な文化人が集まった店。
ここで、浜口は1930年代を過ごしたパリの昔の友人らと再会を果たします。
フジタの元妻フェルナンドもいたそうです。

そこに居合わせたのがユダヤ系ドイツ人画商ベルクグリュン。
ピカソやマティス、クレーなどを取り扱っていました。
当時、版画作品にも力を入れていたベルクグリュンは、ぜひ浜口の作品を見たいとリクエスト。
作品を持っていなかった浜口は急いで制作し、翌月「スペイン風油入れ」を持参すると大変気に入られ、1955年からは専属契約を結びます。

「スペイン風油入れ」
和歌山県立近代美術館所蔵

1954年にパリに着いた南はジョニー・フリードランデル(1912-1992)に銅版画を学び、1957年には浜口と二人展を行うほどになります。
元々、絵画制作や詩作などを行っていた南ですが、パートナーと同じ銅版画の世界でその才能が開花。
互いに刺激を受けながら、世界の第一線で活躍したふたり。

木々、鳥、城、魚、少女…
パウル・クレーとも相似する童話的な要素は、小さい頃から絵本作りに興味を持っていた南が培ってきたもの。
浜口が実際に眼前にあるものをモチーフとしているのとは対照的ですが、根底に流れる思想は共通しているように感じます。

画面に見えるものは入り口に過ぎない。
さあ、扉を開けて、もっと奥へ。
無限に広がる物語を自由につむいでください。

彼らの銅版画が、そんな風に語りかけてくるような気がしてなりません。
 


吉祥寺 ギャラリー 藤田嗣治 長谷川潔 浜口陽三今月のギャルリー・アルマナック吉祥寺では「海を渡った画家三人展 II」と題し、浜口の他に、藤田嗣治、長谷川潔を特集展示。
新入荷作品も合わせ、約80点の作品をご紹介しています。

吉祥寺美術館とのはしごもおすすめです!
皆様のお越しを心よりお待ちしています。

展覧会ページはこちらよりどうぞ

(K・T)