【12月企画展】「藤田嗣治 遺作展」開催中!


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生誕130年の特別な年を祝して、全国の美術館や百貨店で今年目に触れることの多かった画家・藤田嗣治。
晩年の藤田とゆかりの深いフランス・ランス市との特別協力により名古屋、神戸と巡回し、現在府中市美術館で行なわれている大規模な企画展もいよいよ終盤を迎え、多くの美術ファンが貴重な機会を逃すまいと詰めかけているようです。

当店でも11月より、イカール展と併せて開催していた「藤田嗣治 遺作展」ですが、先週よりさらに30点ほどを加えて店内を新たに飾り替え。
今期営業の終了した軽井沢店からの優作多数や、最新の入荷作品を一堂にご覧いただけます。
出品作の一部をご紹介します。

「小鳥を持つ少女」(素描 1955年頃 鑑定書付)

ややあどけなさの残る表情でこちらを見つめる女の子。
広いおでことおませな目つきやポーズに藤田の描く子どもらしさがたっぷりと表れた本作は、1955年頃に制作された油彩画の習作作品と考えられています。
この段階ではまだ細部まで設定されていなかったようですが、腰かけた背後に描かれる柵を止まり木にして、小鳥が女の子の手に置かれた餌をついばむ様子を表現しようとしたのでしょうか。
藤田が敬愛したレオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」の構図にも似ており、藤田の試行錯誤の姿が見えてくるような非常に興味深い作品です。 


「皿の前の猫」(1958年 ペン画 証明書付)

「1958年7月4日 友情を込めて パイヨットのために」
そう書かれたメッセージとともに、藤田が軽快なタッチで描き上げ友人に贈ったペン画。
頭と骨だけ残しすっかりキレイに平らげた魚の皿を前に、満足気に目を細める愛らしい猫は、藤田が晩年を迎えた72歳の時に描いた作品です。
それまで数えきれないほど多くの猫を描いてきたであろう藤田にとっては描き慣れた主題だったのでしょう。
猫の毛並みや表情までが必要最小限の線のみで表現された逸品。


メッサリーナ アズバ エプラス

『猫の本』
出版社:Covici-Friede出版  制作年:1930年
制作部数:500部  技法:コロタイプ

初期から晩年までの画業を通じて、「藤田」と「猫」は切っても切り離せない関係ですが、続いてご紹介するのは、72歳で描いた「皿の前の猫」から遡ることおよそ30年前に出版された作品。
成功の檜舞台となった1923年のサロン・ドートンヌ入選以降、パリ画壇の寵児として華やかな1920年代を過ごした藤田。
ところが、長年に渡る税金の滞納からフランス税務署より支払い命令を受けた藤田は、返済に充てる資金稼ぎと老父への再会という目的のため、1929年9月渡仏後初めての一時帰国を果たします。
本作「猫の本」は、4か月に渡ったその日本滞在を終えパリへ戻る前、わずかな期間訪れたアメリカ・ニューヨークで出版された稀少な挿画本。
出版人兼詩人のマイケル・ジョセフ(Michael Joseph)が詠んだ20点の散文詩に、藤田が描いた20点の猫のコロタイプ版画が収録されています。
特徴的なのは、ジョセフがそれぞれの猫につけたユニークな名前。
20匹の猫には古代ローマの皇妃や旧約聖書の登場人物、メソポタミア文明の伝説的な女王の名などが冠せられ、まるで猫の姿に変えた彼らの姿なのではないかと思えるほど。
見事な存在感と個性で強烈なインパクトを放った作品だったのでしょう。
以降、「猫」の画家としての藤田の地位とイメージが確立したと言われています。


「猫を抱く少女」(1956年 リトグラフ 直筆サイン入り) 「子どもの芸術家」(1961年 リトグラフ 直筆サイン入り)

 

その他、少女像や裸婦など人気の高い主題作品や、稀少な肉筆画10点余りを含む50点以上の豪華な出品作を取り揃え、皆様のお越しをお待ちしております。

12/30(金)までの会期をどうぞお見逃しなく!

(R・K)