吉祥寺店7月企画展「画家が描いた絵手紙と挿絵展」が始まりました


お待たせいたしました。
今月のギャルリー・アルマナック吉祥寺企画展「画家が描いた絵手紙と挿絵展」が始まりました。

今回は、画家が親しき友人たちや周囲の人々へ向けた視線から生まれた、知られざる一葉の数々・・・
どこか高尚な油彩画やライバルと競い合って描いたような大作と違い、
それらは画家が愛情や特別な想いをこめてしたためた文章と、何気ない挿絵が添えられた小さな芸術品。

例えば、印象派の父エドゥアール・マネ(1832-1883)の心を晩年惹きつけたこの麗しき女性。
彼女の名はイザベル・ルモニエ(Isabelle Lemonnier 1857-1926)。

マネは若く美しきイザベル嬢にあてて、30葉以上に及ぶ水彩の絵手紙を送りました。
マネの手紙についてさらに知りたい方はこちら

さらさらと流れるような美しいフランス語の文字と、軽やかで透明感あふれる草花や猫、果物の挿絵が手紙全体に絶妙なリズムを生み出し、それはまるでつい5分前に書かれたような生命力と臨場感すら私たちに与えてくれるようです。

今回の企画展では、このマネの絵手紙を中心に、シャガール、ジョアン・ミロやローランサン、ユトリロ、デュフィらが描いた挿絵を展示・販売いたします。出品作品の一部をご紹介しましょう。


シャガール「ラウル・デュフィに捧ぐ」

“私はデュフィを1914年より前からよく知っていた。
1924-25年頃、プティ・パレ(のサロン展)にはそろって作品を出品したものだ。
彼の人間性とその作品とはぴったり一致していた。
軽やかさ、ある種の賢明さ、そして人生の楽しみ方を心得ていたんだ。”
(追悼文訳)

こちらはデュフィの没後10周年を追悼して1963年に発表された版画集「画家への手紙」からの出品。
生前よりデュフィと深い親交のあったシャガールは、亡き旧友への情愛と敬愛の念を込めて手紙と小さな挿絵を送りました。
小さな丸い実が集まったような花束を手向けているのでしょうか。
左手には二人の思い出の地を象徴するエッフェル塔が描かれています。


ジョアン・ミロ「独り語る」より

1910年代、第一次世界大戦への虚無感から起こった、既成概念や秩序への破壊的思想を称えるダダイスム。その先駆的存在である詩人トリスタン・ツァラの詩にミロは数点の挿絵を描きました。
記号や線が入り乱れ、踊っているかのようなミロの作品は単純でいて複雑。常識や規則に囚われない天才画家ミロの世界観を詩とコラボさせた逸品。



マリー・ローランサン「小動物物語集」

1920年代の「狂騒のパリ」を、ピカソやアポリネールら当時の前衛的芸術家たちと渡り歩いた女流画家ローランサン。
その波乱万丈な人生とは裏腹に、彼女は生涯を通じて小さくて愛らしい世界観を作品に貫き通しました。「小動物物語集」は、そんな彼女の世界観が凝縮された作品。
作家マルセル・ジュアンドーが、幼少時に飼っていた動物たちとの思い出を綴った文章に、ローランサンの柔らかな挿絵が添えられています。



ラウル・デュフィ「ベランファン」

有名美術商アンブロワーズ・ヴォラールの発案により生まれた記念碑的挿画本「ベランファン」。
5人の男女が南仏マルセイユを舞台に織りなす恋愛物語の文章の周囲に、デュフィの軽やかな挿絵が装飾されました。
表紙から章題、飾り文字に至るまで全94ページをデュフィが手がけ、各ページは銅版画(エッチング)により制作。線が活きるようあえてモノクロページのみで仕上げた当代きっての美術商と有名画家のセンスに脱帽の逸品です。
この他にも、1800年代後半から1950年代にかけて制作された、知られざる絵手紙や挿絵などの名品たちを多数出品。
画家たちの生き生きとした感情が伝わる華やかな交友録を是非お楽しみくださいませ。
会期中(~7/31)の皆様のお越しを心よりお待ちしております。

(R・K)