5月「レオナール・フジタの子どもたち展」が始まりました


お待たせいたしました。
今月のギャルリー・アルマナック吉祥寺の展示がスタートいたしました。
エコール・ド・パリの日本人画家藤田嗣治(レオナール・フジタ)が描いた、愛嬌たっぷりの子どもたちが皆様をお出迎えいたします。

当店の企画展では何度か藤田嗣治を特集しておりますが、「子どもたち」を描いた作品にフォーカスした展示は今回初。
実の子どもがいなかった藤田が晩年、積極的に残した子どもたちの絵。

大きな額にきゅっと結んだ口元。
ころんとした丸顔や意味ありげに見据える視線がどの絵も特徴的でありながら、一体東洋人か西洋人なのかさえもはっきりと分かりません。藤田はどんな子どもを描こうとしたのでしょうか。

その真相は、本人のこんな言葉によく表れています。
“私の数多い子どもの絵の小児は皆私の創作で、モデルを写生したものではない。(中抜粋)
私一人だけの子どもだ。私には子供がない。私の画の子どもが私の息子なり娘なりで一番愛したい子どもだ”
(1966年頃、藤田から夏堀昇氏への書簡より)

自分の子どもだと思って描き続けた作品は、晩年の藤田が特別な愛情を注ぐ対象だったのです。

アトリエ扉の当時の様子

 

さて、
子どもを主題にした藤田作品で最も知られている連作があります。
「小さな職人たち」
それは、自宅アトリエの扉を装飾する目的で15cm四方の建材に描かれた、パリの街角で普通に見られる職業に扮した子どもたち。
藤田は、パリの街でたくましく生きる職人たちをあたたかい眼差しで見つめ子どもたちの姿に変えてどこかユーモラスに描きだしました。


200枚近くにも及び、晩年の藤田のアトリエを愛らしく飾ったこのシリーズは、藤田のもとを訪れる友人の芸術家や出版らたちを驚かせ、
2作の版画集「小さな職人たち」(1960年)、「四十雀」(1963年)として出版されることとなりました。

当店では、1960年出版の「小さな職人たち」の完本を昨年末に入手。
木口木版で刷られた21枚の挿絵が収録された稀少な本版画集です。(↓)
企画展では、各挿絵の額装に合わせて、版画集原本も合わせてご覧いただけます。

すみれ売り(『小さな職人たち』より)  印刷屋(『小さな職人たち』より) 辻音楽師(『小さな職人たち』より)
制作中の藤田

この連作で藤田が主題にしている職業の中でも特に重要と考えられているのが、印刷屋や研ぎ屋(他仕立て屋や椅子職人など)のような手先の熟練した技術によって物を作りだす”職人”たち。
それはまさに画家として藤田が培ってきた技術にも通ずるものであり、
生涯自身を”職人”だと自認していた藤田が、自身に重ねて表現した親愛と敬意に満ちた作品なのです。
 

今回の展示では「小さな職人たち」他、直筆サイン入り版画や素描画も特別出品。
晩年の藤田が創り出した愛情溢れる世界を堪能しに是非いらしてくださいませ。
会期中の皆様のお越しを心よりお待ちしております。(~5/31)
「小さな職人たち」と「四十雀」についてはこちらでもご紹介しております。

(R・K)