3月「パリ、アール・デコのファッション画展」が始まりました


お待たせいたしました。
今月の企画展が本日より開催いたしました。

先月の「長谷川潔&浜口陽三 2人展」の静謐で落ち着いた色彩とは対照的に、店内は華やかな色彩の作品に溢れています。
今月のテーマは「パリ、アール・デコのファッション画展」
1910~20年代を中心に流行した一流クチュリエが仕立てたドレスのテキスタイル原画から、当時のファッション雑誌の一葉、そして人気ファッションに身を包んだ女性を描いたマティスやローランサン作品まで、約50点を一堂に展示。

約100年前の流行ファッションとは思えぬほど、ポップでスタイリッシュなファッション画がずらり。
それでは、出品作品を一部ご紹介しましょう。


アンリ・マティス「オーガンジーのドレス」(1922年)

まずは、20世紀を代表する大巨匠アンリ・マティスによる限定50部(直筆ペンサイン入)のリトグラフ版画。
この作品が制作されるほんの20年前の19世紀末まで、ヨーロッパ女性のファッションはコルセットで締めつけられた丈の長いドレスに長い髪を巻き上げるスタイルが一般的でした。
ところがこの作品の女性のファッションやヘアスタイルは、短いボブカットにふわりとした着心地のよさそうなドレス。
装飾の少ないシンプルで活動的なスタイルの格好は、現代のファッションにも通じているようですね。
ドレスの素材は平織りで薄手の透け感が特徴のオーガンジー。
オーガンジーは1920年代ファッションの中でも欠かせない素材の一つですが、特にこの作品が描かれた1922年は、オーガンジーやシフォンなどを組み合わせたドレスを数多くのファッションメゾンが発表したそうで、この女性が最先端の流行をまとっていることが分かります。


ラウル・デュフィによるテキスタイル原画各種

こうした最先端のエレガントを生み出したのがポール・ポワレをはじめとする一流ファッション・デザイナーたち。
画家ラウル・デュフィは、織物会社ビアンキーニ・フェリエ社と専属契約を結び、瀟洒なドレス生地のデザインを数々提供。
幾何学的なモチーフやリズミカルな模様はアール・デコの風潮にぴったりと合い、デュフィが描いたテキスタイルを用いてポワレがデザインしたファッショナブルなドレスはパリの街中にセンセーションを巻き起こしました。


デュフィがフェリエ社に提供したテキスタイルデザインは、ファッションデザイナーたちの手によりフェミニンでエレガントな洋服に次々と仕立てられ、パリの女性たちに熱狂的に受け入れられました。
流行雑誌『ガゼット・デュ・ボン・トン』はデュフィを特集した特別号を2回発行。
それぞれの特集号は①スタイル画8点を収録した1920年第一号と、②夏の流行ワードローブを着た女性たちを4面に渡り描いた1920年第四号。
いずれもデュフィが雑誌のために書き下ろしポショワール版画で刷られた超稀少作品です。
額装するとより高級感が増しますね。

最新のエレガンスを知りたい女性にとってのバイブルは、やはりファッション雑誌。
当時いくつか出版されていた中でも特に人気が高かったのが『ガゼット・デュ・ボン・トン』でした。
『ガゼット・デュ・ボン・トン』は第一次世界大戦中の休刊をはさみ、1912年から1925年まで出版。
とびきり上質の高級紙に、一流イラストレーターが描いたファッション画をポショワールというステンシル版画で収録。
活字やテクストまでこだわりぬき、雑誌そのものを一つの芸術の領域にまで高めました。

こちらは額装作品の一部です。(↓)

この他、イカールやローランサンなどこの時代の人気画家が描いた、当時のファッションを描いた作品も多数展示しております。
是非実際の作品をお近くでご覧にいらしてくださいませ。
会期中の皆様のお越しを心よりお待ちしております。(~3/31)

また次回のブログでは、ヨーロッパファッションにまつわるモード・ジャーナリスムの歴史をご紹介します。

(R・K)