マグリットや浜口にモランディ・・・ワインボトルに魅せられた芸術家たち

 

こんにちは。
ブログをお読みいただきありがとうございます。

皆様、食事のおともや付き合いでお酒を嗜むことがおありですか?
現在では、街のレストランに出向けばビールや焼酎、日本酒からワイン、ウイスキーなど実に幅広い種類や銘柄を揃えた店が溢れていますね。
これだけの洋酒が日本人の食生活に登場するのはもちろん、文明開化の時代になってから。
特にワインは日本での醸造も開始され、食卓の洋風化につれ急速に普及しました。

現在、国立科学美術館で開催されている「ワイン展」も、ワインが日本人の食文化に十分浸透していることの証でしょう。

カラヴァッジョ「バッカス」

古代よりワインが醸造されていた西洋世界では、ごく日常的な光景であったワインのある生活。
これまでにワインや容器が描かれた芸術作品は、枚挙にいとまがありません。
例えば、カラヴァッジョの「バッカス」でもワインは作品に華を添える重要なもの。
現在と形は違いますが、左下にワインボトルが見えますね。
しかし、19世紀中頃までの絵画の主役は人間(あるいは人間の姿をした神)であり、ワインやボトルが主題になる静物画や風俗画は価値の低いものとされてきました。

歴史画や神話画を頂点とする美術界に反旗を翻したのが、因習的な美術教育に飽き足らぬ19世紀中頃の若手芸術家たち。
印象主義や写実主義、象徴主義、など前衛的な美術運動が繰り広げられました。

20世紀芸術はさらに進化を遂げ、マティスやピカソ、デュシャン、ダリら革命的な芸術家が次々と誕生しました。

本日のテーマは、そうした美術運動の変遷の中で独自の個性を築いた芸術家たちが同じ「ワインボトル」という対象物を描いた作品。
作者はジョルジュ・モランディ(1890-1964)、ルネ・マグリット(1898-1967)、そして浜口陽三(1909-2000)の3人です。



ジョルジュ・モランディ(1890-1964)

モランディは、ジョルジュ・デ・キリコや未来派に影響を受けたイタリア人画家。
生涯を通して、瓶や水指など日常のありふれた卓上の静物をひたすらに描きました。
20世紀美術史で特異な位置を占めるモランディの作品に見られるのは、単に静物画家としての括りでは扱えないような深い精神性。
今年、全国で巡回展「ジョルジュ・モランディー終わりなき変奏ー」が開催されているそうで、今後ますます評価が高まりそうです。





ルネ・マグリット(1898-1967)

昨年、国立新美術館や京都市美術館で大回顧展のあったマグリット。
シュルレアリスムと理知的なマグリット哲学が融合する摩訶不思議な作品でよく知られます。
マグリットもワインボトルを主題に作品を描いています。
こちらは挿画本『対蹠地の夜明け』に収録された一枚で、タイトルは「モンテ・クリスト伯爵夫人」。
ワインボトルの丸みを女性の体形になぞらえたセンスに脱帽です。



浜口陽三(1909-2000)

銅版画の大家・浜口陽三が主題に選んだのが、黒い影に浮かぶワインボトルのシルエット。
レモンとボトルを並べた静物絵画は前例があっても、こんなに大胆な構図とインパクトのある作品はないでしょう。
2切れのレモンの配置と背景の濃淡のみでボトルの姿が現れました。

こちらの作品は「長谷川潔&浜口陽三2人展」開催中、当店にてご覧いただけます。


 
表現は異なりますが、これらのボトルには作家が何かを暗喩する思惑があったのでしょうか。
本日は、見れば見るほど意味ありげな、ワインボトルの作品をご紹介しました。

(R・K)