パリジェンヌのためのエレガンス指南誌『Art.Gout.Beaute』


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ブログをお読みいただきありがとうございます。

1914-18年まで続いた忌まわしき第一次世界大戦。
その間、従軍・出征する男性に代わって家庭を守りながら、軍需工場で働き経済を支えたのは「女性たち」でした。
それまで男性の陰に潜み、十分な権利が与えれられていなかっ女性たちは、この「労働」という経験を通して強くたくましくなりました。
その影響からか戦後の1920年代は、特に女性の自立や社会進出が活発化した時代。
外出の機会が増え、娯楽を享受する新しい価値観を持った女性たちが出現したのです。

そうした女性たちにとって、ファッションや化粧などの文化的要素は何より興味のあるもの。
必然的に、服飾装身具を含めた理想的なライフスタイルを指南する雑誌が次々と登場しました。

『Art. Goût. Beauté(アール・グー・ボーテ)』は、この時代の代表的な雑誌の一つ。
“芸術と趣味と美”というタイトルのこの女性誌は『ガゼット・デュ・ボン・トン』や『ジャルダン・デ・モード』などに続いてアール・デコ期の後半に登場し、人気を博しました。


女性のエレガンスを全体的なテーマに、人気メゾンの最新コレクションを紹介するファッションページで始まり、同時代のファッション誌と同様に贅沢なポショワール(ステンシル版画)刷りのファッション・プレートが多数収録されました。

特筆すべきはジャンルを超えたその幅広い情報量。
ファッションの他にも当時広がっていた余暇に焦点を当てることで、読者は狩猟、乗馬、テニス、ゴルフ、ヨットなどをたしなむ生活の手ほどきをこの雑誌から学べたのです。

また実生活の面では子育て、テーブルマナーや住居のあつらえにまつわるアドバイスなどを提供。
生活全般を網羅した話題性が読者を飽きさせない秘訣だったのかもしれません。

この『Art. Goût. Beauté』を手本として制作されたのが、大正時代に絶大な支持を得た日本の高級雑誌『婦人グラフ』(1924-28年)。
主に名家のご婦人やご令嬢に愛読された雑誌で、当時の風俗を知る貴重な資料でもあります。
人気画家・竹久夢二が表紙絵や口絵を担当し、毎号飛ぶように売れたとか。

婦人グラフ

表紙デザインの構図に『Art. Goût. Beauté』との類似性が見られますね。 
和装と洋装が完全に入り混じる独特の時代風潮が「大正モダン」という流行文化の醍醐味でもあります。
何にしろお洒落やトレンドに関する女性の欲求は、万国共通ですね。

当店では1月の「竹久夢二展」開催中、参考資料として『Art. Goût. Beauté』と『婦人グラフ』の原本もご覧いただけます。
会期中の皆様のお越しを心よりお待ちしております。(~1/31まで)

(R・K)