マティス版画集「JAZZ」のご紹介


こんにちは。
ブログをお読みいただきありがとうございます。

ただいま当店で好評開催中のアンリ・マティス展。
特に、明るい鮮やかな色彩が目を引く切り紙絵を元にした作品は観る者の想像力を掻き立てる魅惑的なデザインで高い人気です。

1941年、71歳の時に腸疾患の大手術を受け、体力の落ちていたマティスは1940年代以降、本格的な表現媒体として切り紙絵の制作に注力していきました。
この制作過程では、まず助手がグワッシュで塗った紙をマティスがはさみで切り抜き切り抜いた紙片を組み合わせて配置していくことで一つのフォルムが生まれます。

この切り紙という表現媒体は、 それまでのマティスが何十年も行なってきた創作過程である、モデルを前にした描画からの脱却を意味し、晩年の芸術家に新しい感覚と新たなる創造の喜びをもたらしたことでしょう。

即興的で自由度の高い切り紙絵に魅了されたもう一人が、長年マティスと仕事をともにしてきたヴェルヴの出版人テリアード。
親しい友人でもあった二人は、切り紙絵作品の版画集制作を計画し、1947年に270部限定で「JAZZ」を出版しました。
マティスが感覚的に切り抜き、リズミカルに形を生み出す切り紙絵の創作方法が、即興演奏によってリズムを奏でるジャズ音楽の本質に類似するため、「JAZZ」と名付けられたんだとか。

制作年:2004年
出版社:エディション・アンテーズ
制作部数:1500部
技法:リトグラフ
サイズ:42×32㎝

オリジナルの1947年版は、国立西洋美術館や教育機関に所蔵され、ほとんど市場には流通しないものですが、当店では2004年にアンテーズ社が限定出版した復刻版の「JAZZ」を収蔵。20枚収録された各シートを額装して販売しております。

ちなみに、版画集の題名は「JAZZ」ですが、全体のテーマは 当時流行していたサーカスとマティスの旅の思い出。
幾何学的で抽象的な、切り紙絵らしい表現につけられたユニークなタイトルが、JAZZの世界観を一層引き立てています。
(下記は収録作品の一部)

「スイミング・プール」 124×57cm

 

今からおよそ70年前に制作されたものとは思えない程モダンなデザインの多いマティスの切り紙絵。
言わずと知れた西洋絵画の巨匠ですが、意外に和室のお部屋に合うかも、というお客様の声をよくいただくのがこちらの作品「スイミング・プール」横長の作品ですが、縦にして飾ってもなかなか素敵ですよ。


マティスお気に入りのデザインの一つだった「スイミング・プール」は、彼が晩年にアトリエを構えたニースのホテル・レジーナの壁にもなりました。

インパクトのある色彩とフォルムでありながら、どこか調和と落ち着きを感じさせるマティスの切り紙絵。
生き生きとした生命力あふれる切り紙絵の数々をご覧に、是非当店のマティス展へお越しくださいませ。


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(R・K)