ボッティチェリ版画集『サンドロ・ボッティチェリとその時代』のご紹介


こんにちは。
ブログをお読みいただきありがとうございます。

先月末まで渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムにて開催していた「ボッティチェリとルネサンス フィレンツェの富と美」展。
ボッティチェリが活躍した初期ルネッサンスのフィレンツェを取り巻く背景を芸術的視点のみではなく、政治的・経済的側面を織り交ぜながら鑑賞できる、大変見応えのある美術展でした。
先日ブログでもご紹介しましたね。

15世紀後半、ヨーロッパ経済の一大中心であったフィレンツェ。
その財力の源であったメディチ家に寵愛され、数々の公的建造物や邸宅に作品を残したサンドロ・ボッティチェリは、当時どれほどの強い影響力があったことでしょう。

今回は、麗しき花の都フィレンツェを代表する画家ボッティチェリの作品を元に、1907年に制作された版画集『サンドロ・ボッティチェリとその時代』をご紹介します。

『サンドロ・ボッティチェリとその時代』 
制作年:1907年
出版社:グーピル商会 / マンツィ&ジョワイヤン
制作部数:50部(特別スイット版付)
技法:エリオグラヴュール、エッチング
サイズ:42×32㎝

ゴッホやゴッホの弟テオが勤めたことでも知られる美術商会グーピル商会が、超稀少部数限定50部で出版した2冊セットの豪華な版画集です。
重厚感のある革装丁が歴史を感じさせてくれますね。

まずは一冊目。

当時、グーピル商会で経営の指揮を執っていたミシェル・マンツィとモーリス・ジョワイヤンが編集し、ボッティチェリとその周辺時代を生きた画家たちについて解説した資料。
さらに、頁の装飾や合間に当時の作品を忠実に再現した銅版画がカラー20点、モノクロ50点挿入された美術書とも言える逸品です。


ボッティチェリ作品の色鮮やかな描写を丁寧に再現したカラー銅版画(左下)は100年以上経ているとは思えない程の美しさ。
カラーの色彩の美しさとは対照的に、線が活きるのがモノクロ版画(右下)。
柔らかなインクの諧調でシックな雰囲気に仕上がっています。

そして、こちら(↓)が2冊目。
70点のモノクロ版画を特別収録したスイット版(特別版)である本書は、
どの版画作品も思わずため息が出るほど美しく、神々しい輝きを放っています。

またボッティチェリの特徴の一つと言えば、その師匠フィリッポ・リッピの影響を強く受けた優美で愛らしい女性像。
本書には、ボッティチェリの有名な作品に描かれている女性を、部分的に切り取ったユニークな銅版画作品も特別収録。

例えば、下の6人の女性のうち横顔が美しい右上の女性。
どの作品に登場する美女かお分かりですか?
彼女は「プリマヴェーラ(春)」に描かれた三美神の一人で、「純潔」の寓意。

禁欲的な雰囲気の中に官能的な魅力がほんのりと漂い、
美女の定義は国や時代で違えども、ボッティチェリの生む女性像には、どこか普遍的で永久的な美が宿っているのが不思議ですね。

今回ご紹介した版画集『サンドロ・ボッティチェリとその時代』は現在、吉祥寺店にてご覧いただけます。
日本国内ではほとんど入手されていないボッティチェリの古版画。
お好みの作品の額装なども承っておりますので、ご希望の方は是非お問い合わせ(0422-27-1915)くださいませ。

(R・K)