Bunkamura ザ・ミュージアム「ボッティチェリとルネサンス展」


こんにちは。
ブログをお読みいただきありがとうございます。

突然ですが、こちらのマーク。
何を表しているかご存知ですか?

これは「フルール・ド・リス(fleur de lys=百合の花)」と呼ばれるもので、ヨーロッパでは古くから紋章などに用いられてきた意匠。
特に、フランスは5世紀より王家の紋章として百合の花を採用してきました。

3枚の花弁が左右上方向に広がる形を基本に多くのヴァリエーションがありますが、花弁の間からすっと伸びた雄しべが特徴的なこちらはイタリア・フィレンツェ市の紋章。
フィレンツェ市内の大聖堂の壁や木扉の金具など歴史ある建造物の装飾や、現代のマンホール蓋にも象られています。

元々フランス王家を象徴する「フルール・ド・リス」が、イタリアの一共和国であったフィレンツェの紋章として認知されたのは13世紀以降。
フィレンツェを基盤に活動したメディチ家が銀行業で莫大な利益を得たからでしょう。

ヨーロッパの大都市に支店を持っていたメディチ銀行は、フィレンツェ共和国で発行されたフローリン金貨を流通させることに成功。
フローリン金貨はおよそ300年に渡って国際通貨として波及しました。

実は、このフローリン金貨の表面に彫られているのがフィレンツェ市の紋章「フルール・ド・リス」。
ルネッサンスの繁栄を導いた遠因に百合の花の力があったかもしれません。

フローリン金貨(表面にフルール・ド・リス、裏面に洗礼者ヨハネ)

 

また、キリスト教においては百合は慣習的に「純潔」や「貞節」の象徴。
高潔な聖母マリアのシンボルとして数多くの宗教絵画に描かれてきました。
特に、メディチ家の絶大な庇護を受け、初期ルネッサンスの礎を築いたボッティチェリの描く優美で瑞々しい聖母像には純白の百合の花がよく合います。



イエスを身ごもることを大天使ガブリエルがマリアに告げる有名な「受胎告知」(上)
驚きながらも受け入れるマリアは純潔の象徴である白百合を携えています。

幼子イエスを慈しむ聖母が描かれた「聖母子と二人の天使」(下)
付き従う天使たちの間に高くそびえる白百合が見えますね。
高さ120cm程あり地中海地方東部からイタリアに広まった品種の百合だそうです。


百合が描かれたこれらの作品はいずれも、現在Bunkamuraザ・ミュージアムで開催中の「ボッティチェリとルネサンス展」にてご覧いただけます。
フィレンツェ・ルネサンス繁栄の流れの中で誕生した、ボッティチェリという奇跡の画家。
メディチ家やサヴォナローラなど周辺人物たちとの関わりも交えながら、フィレンツェ・ルネサンスを俯瞰できる贅沢な美術展です。

版画集「ボッティチェリとその時代」(1907年)

 

また、ボッティチェリらルネサンスの稀代画家の作品を元に、約100年前に制作された古版画は弊社でお取り扱い。
詳しくはこちらをご覧くださいませ。

(R・K)