マグリット挿画本「対蹠地の夜明け」のご紹介

出版元:ル・ソレイユ・ノワール
技法 :フォトグラヴュール
制作年:1966年
制作部数:900部
サイズ:18×13cm

こんにちは。
ブログをお読みいただきありがとうございます。

マグリットの作品に少しでも触れたことのある方なら、作品が発する強烈なインパクトは視覚的な要素のみによるものではなく、「タイトル」の不可思議さと重なって生み出されることに納得されるでしょう。
シュルレアリスムの詩人や文学者をはじめとする前衛芸術家の仲間と集い、自由な表現を模索したマグリットがタイトルに込めた想いは何だったのでしょうか。

今回ご紹介するのはマグリットが晩年に手がけた稀少な挿画本「対蹠地の夜明け」。
対蹠(たいしょ・たいせき)とは”正反対”の意味があり、「地球の裏側での夜明け」と訳される場合もあります。

本の表紙に描かれたコップや鳥、葉のシルエットがすでにマグリット的ですね。
詩人アラン・ジョフロワが執筆した文章に、マグリットによるオリジナルデザインのフォトグラヴュール7点が収録されました。


先ほどタイトルのことに触れましたが、さてここで皆様に問題。

この7点には順不同で以下のタイトルがついているのですが、
「軽い木立の中で」
「モンテ・クリスト伯爵夫人」
「悪魔の微笑み」
「二つの謎」
「ランプのように飛び散るイメージ」
「端の外側」
「恐怖のコルク栓」

それぞれのタイトルに対応する作品はどちらだと思いますか?思わず考え込んでしまう、マグリットらしいタイトル・・・
(正解は 上から順に Ⅴ Ⅲ Ⅳ Ⅶ Ⅱ Ⅰ Ⅵ)

パイプやシルクハット、瓶などマグリット作品によく登場するモティーフが、この挿画本の中では細かい線の描写が可能なフォトグラヴュール(写真製版を併用した銅版画)を用いることによって、色彩に溢れた油彩作品とは違った印象を与えてくれます。


小品で飾りやすく、珍しいマグリット作品をお探しの方にはかなりオススメの逸品。
また、アラン・ジョフロワが著した文章とそのユニークな構成も必見。
会期中は本書を実際にお手に取ってご覧いただけます。


最後にこちらは、ベルギーのブリュッセルに残るこじんまりとしたカフェ。
「カフェ・ラ・フルール・アン・パピエ・ドレ」
“金色の紙の花”という素敵な名前を持つこのカフェは、マグリットがシュルレアリストの芸術家仲間たちと過ごした憩いの場所です。

現在も往時の面影をとどめるこのカフェでマグリットが友人と交わした一言から生まれた作品が、もしかしたらあるかもしれませんね。


友人たちとカフェの前にて(右から2番目がマグリット)


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(R・K)