その起源はメソポタミアや古代エジプトまで遡る、奥深き香水の歴史

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ブログをお読みいただきありがとうございます。

さて、今回はガラス工芸コーナーで今月特集している香水瓶にちなみ、香水が人間の歴史にどのように関わってきたのか。
その深い歴史を掘り下げていきます。
そもそも「香水」の原料である香料の起源はいつでしょうか。

香料が歴史に登場するのは、紀元前3000年頃。
メソポタミアや古代エジプトの時代まで遡ります。
当時はレバノンスギや白檀、イリスなどが神へ薫香を捧げたりミイラの防腐など主に儀式目的で用いられてきました。

西洋絵画の主題にも香料は必ず登場します。
「東方三博士の礼拝」
キリスト生誕を祝し三人の賢者が持ち寄った贈り物が黄金、没薬、乳香。
このうち、没薬と乳香は香料の一種。
当時、黄金に匹敵するほど高価で神聖な献上物だったことが分かります。

「東方三博士の礼拝」

アルコールに複数の香料を溶かした芳香液体である「香水」が誕生するのは10世紀頃。
14世紀になるとアルコールと水を分離する蒸留技術が完成し、香水の製造方法が確立したと言われています。
さらに時代は下り、香辛料や絹織物などの産物がヨーロッパに紹介される大航海時代を経て、フランス王侯貴族の間に花開いた香水文化。
パフューマーと呼ばれる職業調香師が調合する魅惑的な香りは、宮廷生活に華やぎを添えたことでしょう。
(当時入浴の習慣がなかったフランス人にとっては体臭を隠す目的もあったそうですが)

そして王侯貴族の贅沢品であった香水が、市民革命を経て一般富裕層にまで広がるのが19世紀。
香水専門店が街中に誕生し、女性たちの心を虜にする優美な香水瓶が次々と生まれました。
特に、ルネ・ラリックやバカラなど一流のガラス工芸家・ブランドが手がけた香水瓶は、今なお高い人気を誇る芸術作品です。

調香師を題材にした映画「パフューム」の一場面

では、20世紀になるとどのような変化が起こったのでしょう。
この時代は、ポール・ポワレやココ・シャネルなどのデザイナーが登場したファッションの革命期。
ショートカットのヘアスタイルに膝丈スカートをまとったモダン・ガールと呼ばれる、活動的な女性たちが服装で自由に自己表現を楽しむようになります。

彼女たちに目をつけたのが、ポワレやシャネルなどのファッションデザイナーたち。
「ファッションに、更なる気品と品格を加えるには服装にふさわしい「香り」も必要」
そう考え、ファッションブランドが独自の香水をプロデュースするようになりました。
それ以降今日まで、ファッションと香水は切っても切り離せない関係になっていくのです。

長い時間をかけ進化し、今では私たちの生活にごく身近で手軽な日用品となった香水。
今月の企画展では約100年前の香水瓶を20点程展示販売しております。
香水瓶から今もほんのりと漂う名香とともに、人類と香りの5000年の歴史に思いを馳せてみてはいかがですか。

(R・K)