三井記念美術館「デミタス コスモス展」


こんにちは。
ブログをお読みいただきありがとうございます。

皆様は、何か小さな物を長年蒐集されていたりしますか?
現在は特に蒐集歴がなくても幼少の頃、男性であれば鉄道や車のフィギュアなどを、女性であれば人形のままごとグッズなどを熱心に集めたことが一度はあるかと思います。

「蒐集」という欲求心理の中でも、小さな物をコレクションする心理は実に奥深いもの。
小型物の蒐集には何か生来的に私達を惹きつけてやまない魅力があるのです。

今回は、そうした小さな蒐集物の中から、愛らしいサイズのデミタスカップ&ソーサーを集め続けている、あるご夫妻のコレクションをご紹介しましょう。

三井記念美術館

現在三井記念美術館にて開催中の「デミタス コスモス」展。
ここには、東京都在住の鈴木ご夫妻が約40年かけて1点ずつ蒐集した500点超のデミタスカップ&ソーサーから優品約300点が一堂に展示されています。
「デミタス」とはフランス語でdemi=半分、tasse=カップを意味する小ぶりの器のこと。
西洋文化では、食後に口中に残った油分を流し消化を助ける目的で、じっくりとドリップした濃いコーヒーやエスプレッソを飲む習慣が生まれました。


コーヒーを飲むルイ15世の愛妾デュ・バリー

南米産のコーヒーがヨーロッパへ伝播したのは17世紀。
以前ご紹介したチョコレートの歴史とも似ていますが(詳しくはこちら)大航海時代を経て東西の交易が飛躍的に発展してからのことです。
宮廷や貴族向けの嗜好品であったコーヒーは19世紀には一般大衆も口にできるようになり、そのため、この時期にヨーロッパの各窯がカップ&ソーサーの生産を増加させました。

マイセンやセーブル、ロイヤルウースター、ロイヤルクラウンダービーなどヨーロッパ各国の歴史ある窯に加えて新興の窯が参入。
職人や絵付師が高い技術を競い合い、多種多様なデミタスカップが登場したのです。


ロイヤルウースター 1880年代

 

今回の展示品の中でもとりわけ異彩を放っていたのがこちら。
全面に施されているのは、何と精緻な透かし彫り。
素地を完全に乾燥しない状態に保ちながら、規則的に小さな穴をくりぬくまさに超絶技巧。
ジョージ・オーエンという名技師が手がけ、生涯その方法を明かさなかった幻の技法です。
全面透かし彫りのため、もちろんこれは鑑賞目的で制作されました。


ミントン 1910-20年

 

こちらはカメオのような立体的模様が美しい一品。
青や黒の暗色地に液体状の白の泥漿を何度も塗り重ねることでレリーフ状の絵様を浮かび上がらせるパツィオパットと呼ばれる技法です。
カメオのように「削る」のではなく、「重ねる」という相反する技法表現が面白いですね。

この他にも目を見張るような盛金装飾や瑪瑙模様、写実性高い果物や花鳥図が描かれていたりと、デミタスという約7cm四方以下の愛らしい空間はまるで小さな宇宙。
「デミタス コスモス」という展覧会のタイトルにも納得の素晴らしい展示でした。

こうした愛らしいデミタスカップ&ソーサーは当店でも、常時お取り扱いしております。
鈴木夫妻が一期一会の縁で蒐集してきたという可愛らしいデミタスカップ&ソーサー。
皆様とデミタスカップの一期一会の「出会い」が当店でも生まれますように。

ご質問などございましたらお気軽にお電話(0422-27-1915)またはこちらよりお問い合わせください。

(R・K)