3月「藤田嗣治展」及び「ガレ&ドーム ガラス工芸展」が始まりました ②

 

こんにちは。
ブログをお読みいただきありがとうございます。

さて、今週から始まった「藤田嗣治展」と「ガレ&ドーム ガラス工芸展」。
おかげさまで多くのお客様にご好評いただいております。
前回に引き続き、今回はガラス工芸展をご紹介しましょう。

エミール・ガレとドーム兄弟という天才的なガラス芸術家が登場したのは、アール・ヌーヴォーという新奇な美術様式が流行した19世紀末のこと。
当時前衛的と捉えられたその造形美は、自然に創作の霊感源を求め、植物などの有機的モティーフに着想を得た生命感あふれるデザインが特徴、というのはよく知られていますね。

しかし、一口にアール・ヌーヴォー様式と言っても様々な表現の違いがあるのをご存知ですか?
ミュシャやルイス・カムフォート・ティファニーらは、植物や動物を意識的に抽象化し繰り返し配置することでリズミカルな文様に仕上げ、また輪郭線や曲線を強調した意匠のアール・ヌーヴォースタイル。

一方で、ガレやドーム兄弟が目指したのは徹底した自然観察に基づく写実的表現。
その理由の一つは、彼らが活躍したナンシー村が、当時流行していた園芸植物の種苗生産や品種改良の一大中心地であったから。
海外由来の珍しい植物から山野に自生する草花まで多種多様な植物が繁茂していました。

葉脈の1本1本から蝶の羽の模様まで、在るものを在るがままに描写するガレやドーム兄弟らナンシー派の自然主義は、当時の実証主義思想(経験的事実に立脚した考え)に影響を受けているとも言われています。

以下は、例に挙げた4芸術家の作品。違いがお分かりいただけるでしょうか。

クレマチス、スズラン、オダマキ、ユリ、チューリップ、ホクシャ、桜、ダリア、トルコキキョウ、ナスタチウム、ヒヤシンス・・・・・
ガレとドーム兄弟の作品を眺めていると、まるで春夏秋冬あらゆる季節の、そして世界の様々な場所の庭を散歩しているかのような気分になります。
いずれの作品も、自然の持つ無垢な美しさとガラス芸術の繊細さが呼応して誕生した、奇跡的な美です。

妍を競う究極のライバルであると同時に、自然主義を貫くナンシー派として団結した仲間であったガレとドーム。
お互いの存在があったからこそ生まれた至高の芸術作品。
めくるめく美の競演をどうぞお楽しみくださいませ。

ご質問などございましたら、お気軽にお電話(0422-27-1915)またはこちらよりお問い合わせください。

ちなみに、先日「美の巨人たち」で特集されたこちらのアントワープ中央駅。
1905年に完成したこの駅舎の時計台をぐるりと囲む半円形の窓は、羽を広げた孔雀の様子を流行のアール・ヌーヴォー様式で表現したんだとか。
抽象化した孔雀の造形は、ガレやドームよりもミュシャやティファニーに近いアール・ヌーヴォー様式・・・でしょうか。
絵画からガラス工芸、建築までアール・ヌーヴォーの奥深さは計り知れませんね!


(R・K)