オールドノリタケ「チョコレートセット」のご紹介
生産国:日本
制作年代:1935-41年頃
こんにちは。
ブログをお読みいただきありがとうございます。
一年で最も厳しい寒さの2月。寒い日が続く時期は身体の芯からポカポカになる飲み物が欠かせませんね。
本日は、温かいココア(ホットチョコレート)を楽しむために作られた、オールドノリタケの「チョコレートセット」をご紹介いたします。
チョコレートの濃厚なこげ茶色によく映えるターコイズブルー。
爽やかなブルーと装飾のないシンプルで機能的なラインが相まって、ロココ調の豪華な陶磁器とは一線を画すようなどこか”潔さ”を感じるのは私だけでしょうか。
青という寒色ながらもカップやソーサーの端に控えめに施された金彩の縁取りによって暖かみやフェミニンさが加わっています。
一般に、金彩の絵付けはとても繊細。
そのため、扱いによっては剥落することが多いのですが、当店のチョコレートセットは剥がれが全く見られない素晴らしい状態の一品です。
ところで、今日ではスーパーやコンビニで簡単に手に入る「チョコレート」。
そのチョコレートが上流階級の嗜好品だったことをご存知ですか?
チョコレートの起源。それは紀元前1500年頃のメソアメリカ(中南米)まで遡ります。
チョコレートの主原料であるカカオ豆はこの地域の特産品。
マヤ文明やアステカ文明の時代には通貨や万能薬としての利用もあったんだとか。
当時はローストした豆をすりつぶし、水やトウモロコシの粉、唐辛子などを加えた少しスパイシーな飲み物でショコラトールと呼ばれていました。
さて、時代を先送りして16世紀のヨーロッパ。時は大航海時代。
オランダやポルトガルが他国に先駆けて、インドやアジア、アメリカ大陸などに進出していきます。
現在のメキシコに位置したアステカ帝国を征服したのはスペイン人コルテス。
彼はこの時、ショコラトールの存在を知り国王カルロス1世への献上物としてそれを持ち帰ります。
インドやアジア原産の香辛料がヨーロッパへ運ばれ、香辛料貿易が本格化したのもこの時代。
それまで肉や魚の保存技術が乏しかったヨーロッパで香辛料は最も高価な商品でした。
この時期一緒に流入された香辛料の一つが「砂糖」です。
コルテスがスペインに持ち帰ってから17世紀以降、王侯貴族を中心にヨーロッパに広まったショコラトールですが、その味は苦くて辛いもの。
そのため、飲みやすく砂糖を加えた”甘い”飲み物に徐々に変化していきます。
しかし当時は砂糖も貿易を通じてもたらされた高級品。
そのため、この「甘いショコラトール」(以下、チョコレート)は贅沢な嗜好品として上流階級の象徴になりました。
こちらの絵画では、着飾った王侯貴族がゆったりとくつろぐ様子が描かれていますが、自慢げにチョコレートの入ったカップを掲げている・・・ようにもみえます。
その後、富裕層の特権的な飲み物であったチョコレートは、産業革命による技術進歩を経て19世紀ごろから一般市民にも広がりました。
特に、オランダ人バンホーテンが開発したチョコレートを粉末状にする技術(ココアパウダーの誕生)も普及を飛躍的に進める要因になったそうです。
本日はバレンタインデー。
今宵は長いチョコレートの歴史に思いを馳せながら、熱いホットチョコレートを味わいませんか?
(R・K)