GALLERY A4 「小さなホールの物語ー髙野悦子のシネマライフー」


こんにちは。
ブログをお読みいただきありがとうございます。

ブリヂストン美術館やポーラ美術館、サントリー美術館など国立美術館に引けを取らない屈指のコレクションを揃える企業ミュージアム。
創業者が蒐集した美術品の展示や、その企業の特殊技術や専門知識の公開などその目的は様々ですが、美術館経営による地域社会への貢献などCSR(企業の社会的責任)活動の一環として取り組んでいる企業も多いですね。

本日は、そうした企業系美術館の中から、意外と知られていない穴場のアートスポットをご紹介いたします。
「GALLERY A4 (ギャラリーエークワッド) 」は、大手総合建設会社の竹中工務店が運営支援するミニギャラリー。
江東区にある竹中工務店本社1階のスペースで芸術にまつわる企画展や各種イベントを開催しています。

フランス留学中の高野氏(1959年)

 

ここで2/5まで開催していた企画展が、「小さなホールの物語 ー髙野悦子のシネマライフー」。
神保町の一角にある岩波ホールの総支配人であった髙野氏の生涯と業績を振り返る展覧会です。

1929年生まれの髙野氏は、大学の論文研究を通して映画製作に魅せられます。
しかし、映画監督が女性の職業と考えられていなかった当時にその希望は叶いませんでした。
それでも、映画の世界に携わる夢を抱きフランスへ留学。
帰国後、縁あって開場を手伝った岩波ホールの総支配人に就任します。

以降、独自の視点と鋭い感性で選び抜いた様々な作品をホールにて上映し続け、その文化的功績は今も高く評価されています。

特に、彼女がこだわり続けたのが「女性」という視点です。
「女性映画人の活躍は世界の映画界を活性化する」という信念の元、積極的に海外の女性監督の作品を紹介。
1985年に初開催された東京国際女性映画祭の最高責任者を2012年まで務めました。

1974年から2014年までの上映作品

今回の展示で特に印象的だった言葉があります。

“人間の文化を作るために女性は監督になるのであって、男性のコピーではない。
これまでの男性文化に女性の視点を加えて、真の人間文化を作るのだ”

髙野氏とともに女性映画祭開催に尽力した、フランス人女優・監督ジャンヌ・モローの言葉です。
日本・海外含め多くの女性映画監督が今日のように活躍するようになる前に、時代を切り拓き新しい価値観・感性を提供するため、「女性の視点で世界を見ることの大切さ」を唱え戦い続けたジャンヌ・モローや髙野氏は、映画界最初のフェミニストだったのではないでしょうか。

企画展では資料スペースが設けられ、岩波ホールで過去に上映した映画のチラシやプログラムなどが閲覧可能。
何気なく手に取りパラパラとめくっていたら、映画美術協力で昨年お世話になった(詳しくはこちらのブログで)映画監督・小栗康平氏の作品「伽耶子のために」(1984年公開)の資料を発見。
思いがけないご縁を感じてしまいました。
    


2015年で活動10年目を迎えるというGALLERY A4 。
GALLERY A4 はじめ、文化・社会貢献活動に取り組む企業系美術館が今後もますます増えるといいですね!

(R・K)