2月「ルイ・イカール展」が始まりました

 

お待たせいたしました!
2/1より今月の企画展「ルイ・イカール展」がスタート。

曲線が繚乱する19世紀末アール・ヌーヴォーの装飾世界をご紹介した先月のミュシャ展とはがらっと変わり、今回の舞台はアール・デコが席巻した1920年代から30年代。
それは同時に、イカールが生涯モティーフにした「女性」が時に朗らかに、時に艶めかしく人生を自由に謳歌した華々しい時代です。

フランス南部の古都トゥールーズで生まれ育ち、演劇や舞台に惹かれた少年イカール(1888-1950)。
その後、舞台美術や衣装デザインなどにも興味を持ち始め、徐々にデッサンやスケッチを習得します。
そして、1905年頃演劇への情熱冷めやらぬ青年が芝居の世界を目指し友人とパリに上京。
サンドイッチマンなどの仕事もしながら、少しづつ給料を得るようになったのはポストカード工房で働き始めてからのことでした。

1900年前後はポストカードの黄金時代とも呼ばれています。
官製のハガキがオーストリア・ハンガリー帝国で最初に発行されたのが1869年。
文字だけのやり取りが当然だったそれ以前の書簡に比べ、イラストによる視覚的なメッセージに短い文章を添えるだけで送れる手軽さもあって、ポストカードは瞬く間に流行しました。

特に、アメリカ輸出用に人気の高かったポストカードは、少しコケティッシュなパリジェンヌの姿を描いたもの。
イカールは工房で版画技術を学ぶと同時に、ここで流行のファッションや時代のニーズを読む力も養ったのでしょう。

こうしたポストカード工房での修行や、後に挿絵を投稿したモード雑誌のイラストレーターとして培った経験が、イカールの版画家としてのオリジナリティとキャリアに大きな影響を及ぼしたのです。

 

オーキッド オーキッド<部分>

イカールといえば銅版画で知られていますが、基本的なエッチングやアクアチント技法にとどまらない高度な技術を熟知し、彼にしか表現できないと言われる独特の世界を作りだしました。

特に目を見張るのが人物の背景を引き立てるグラデーションや質感。
胸に蘭を抱いた女性が凛と佇む「オーキッド」(↑)の背景はまるで大理石のよう。

トスカ トスカ<部分>

こちらはプッチーニのオペラ演目で知られる「トスカ」(↑)。
遠く背景に描かれているのは、劇中で舞台になる教会でしょうか。
窓から差し込む光を受けて、真っ暗な教会が淡い紫色に仄明るくなる一瞬を捉えたようです。
紫色と黄色のコントラストで魅せる、教会の神聖さと恋人を失うトスカの切ない情感。
両作品とも演劇を愛したイカールならではの表現ですね。

今回は上作品を含む豪華な34点を展示販売しております。
魅惑的なイカールの世界に酔いしれてみてはいかがですか。

当店のイカール取扱作品はこちら

(R・K)